日立製作所は12月24日、従来のブラックボックス型AIを判断基準が明確なAIに変換するAI単純化技術を開発したことを発表した。製品検査の自動化、金融審査業務の効率化、インフラ制御の自動化などに活用していく。

従来のブラックボックス型AIは、予測精度を高めるために複雑な数式で構成されており判断基準が不明確であるため、未知のデータに対して意図しない予測結果を導く不安やリスクがあった。一方、今回発表した新技術を用いたAIは、あらゆる入力に対して人が理解できる単純な予測式を創出することにより、明確な判断基準の下で予測結果を提示するという。

  • AI単純化技術の概要

具体的には、まずAIへのさまざまな入力データに対し、要因(特徴量)が予測値に及ぼす影響の強さ(貢献度)を算出する。次に、特徴量が変化しても予測値への貢献度が一定である入力データの領域をクラスタリング技術により抽出。

抽出された入力データ領域ではその特徴量は予測値に影響を与えないため、その領域で判断基準を単純化できることを期待してAIを単純な予測式に変換する。このような処理をすべての入力データ領域で繰り返し、全領域を理解可能な単純な予測式に変換するという仕組みだ。

また同技術は予測式の調整も可能で、予測精度を維持・向上しながらAIをカスタマイズできるとしている。具体的な例でいうと、「耐震基準が2000年に変更されたので、1998年ではなく2000年の前後で判断基準が替わるようにしたい」というような調整が可能で、データが少ない領域での予測精度を向上させることができる。

  • 予測式の調整が可能

同技術の一部は、日立グループにおける製品出荷前の自動検査ラインに適用され、熟練者不足の解消や検査速度の向上効果が確認されたという。今後日立は、製造・金融・インフラ制御などさまざまな領域で、信頼できるAIの実装とそれを通じた社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)につなげる方針だ。