奈良県立医科大学(奈良県立医科大)は12月13日、柿から高純度に抽出した柿タンニン(柿渋)が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症の病態を改善させること、ならびにウイルスの伝播を抑制させることを、ゴールデン(シリアン)ハムスターモデルにおいて実証したことを発表した。
同成果は、同大免疫学講座の伊藤利洋教授、同大学微生物感染学講座の矢野寿一教授ららの共同研究グループによるもの。詳細は、英国の科学誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
新型コロナの主な感染経路は接触ならびに飛沫とされており、口腔内の新型コロナを不活化できれば、その感染伝播を抑制できるのではないかと期待されている。一方の柿渋は、植物に含まれるポリフェノールの一種で、古くから防虫や防水、染色といった用途で活用されてきたほか、近年の研究から抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用、抗酸化作用などの作用があることが分かってきた。
これまでも研究グループは、柿渋が新型コロナに対する不活化効果を有することなどを報告してきていた。今回の研究では、柿渋をハムスターの口腔内に事前に投与し、人為的に新型コロナ感染症モデルのハムスターに新型コロナに感染させたところ、肺炎重症化の軽減が確認されたほか、非感染体への投与により、感染動物からの感染伝播が抑制されることを見出したという。
今回の成果について研究グループでは、柿渋が新型コロナと直接結合することで、ウイルスを効果的に不活化した結果だとしており、今後の新型コロナ予防に向けた柿渋の応用が期待されるとコメントしている。