慶應義塾大学(慶大)は12月9日、これまで100Hzほどに留まっていた柔軟性かつ伸縮可能な半導体デバイスの動作周波数を、非接触式交通系ICカードなどでも用いられている13.56MHzまで向上させることに成功したと発表した。
同成果は、慶大理工学部 電気情報工学科の松久直司専任講師、米・スタンフォード大学 化学工学科のSimiao NIUポスドク研究員(研究当時)、同・Zhenan BAO教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。
次世代のウェアラブルデバイスは、より柔らかく、皮膚に密着しても違和感なく常時駆動し、生体情報を取得し続けることの実現が求められている。その実現のため、世界中でゴムのような柔軟な材料を、伸縮性の導体や半導体などの電子材料に作り替えるという研究が進められている。
近年、生体のような柔らかさを示しながら、電気特性は最新の半導体材料とほぼ同じという高性能な伸縮性半導体材料が発明され、それを利用したさまざまな伸縮性半導体デバイスも実現されるようになってきたが、それらの動作周波数は100Hz程度と遅く、より高い周波数での動作の実現が求められていた。
研究チームは今回、そうした課題解決に向け、高周波駆動用に精密にチューニングされたさまざまな新しい伸縮性電子材料を活用することで、従来の伸縮性半導体デバイスと比べると10万倍以上の高周波駆動となる13.56MHzの伸縮性ダイオードの開発に成功。元の1.5倍の長さにまで伸ばしても高周波動作が可能なほか、繰り返しの伸長を与えても高い電気特性を維持できるという特徴を持つことが確認されたという。
なお、実際に、この高周波伸縮性ダイオードを用いて、柔らかく伸び縮みするセンサ・ディスプレイ・アンテナと集積化し、衣服に仕込まれたアンテナからワイヤレスで給電され、センサの信号をリアルタイムでディスプレイ素子の色変化として表示することが可能な仕組みを有するシステムを開発。大きく伸長しても壊れることはなく、次世代のウェアラブルデバイスとして着け心地だけでなく、優れた機械的耐久性も期待できることを確認したという。