米IC Insightsは11月17日(米国時間)、2021年の半導体企業の売上高ランキングでトップ25社に入るとみられる各社の年間成長率を発表した。ほとんどの企業で2桁成長が予想され、半導体業界全体でも20%を超える成長率が予測される中、Intelとソニーだけがマイナス成長するとみられるという。

2021年の半導体市場は、急激な半導体需要の増加もあり、前年比23%増と大きく成長するとIC Insightsでは予測している。また、半導体デバイスの出荷数量も同20%増、半導体の平均販売価格も同3%増となる見込みでもあるという。

  • IC Insights

    2021年の半導体企業売上高トップ25の前年比増減率 (出所:IC Insights)

米台のファブレス4社が50%を超す成長率と予想

多くの半導体企業が2桁の成長率を記録するものとみられる2021年だが、その中でもAMDは同65%増、MediaTekは同60%増、NVIDIAは同54%増、Qualcommは同51%増と大手ファブレス4社の成長率は非常に高くなる見込みである。

AMDの急成長の背景には、データセンターサーバプロセッサ、コンシューマPC、ゲーム機といった分野での伸びがけん引するものとみられており、Intelにとっての脅威となっている。

MediaTekの急成長の背景には、スマートフォン(スマホ)、テレビ、音声アシスタントといった従来から強い分野での成長に加え、Chromebook、フィットネス機器、Wi-Fiルータなどさまざなシステム分野の伸びが加わった結果と見られる。中でも5Gスマホに関しては、TSMCの4nmプロセス採用SoCの提供により、リーダー的なポジションを確立しようとしている。

NVIDIAの急成長の背景には、引き続きAI分野や暗号資産のマイニング、スーパーコンピュータ、自動運転などでの市場拡大が挙げられるほか、2021年第4四半期には、新たな成長ドライバとしてメタバース、没入型の次世代インターネットプラットフォームが登場した。

Qualcommの急成長の背景には、スマホ分野の伸びもあるが、それ以外の自動車、ワイヤレスホームブロードバンド、産業向けなどでの成長機会を掴みつつある点にあるという。

トップ25中マイナス成長となるのはIntelとソニー

2021年の半導体市場は同23%増と予想される中、売上高2位のIntelの売上高は同1%減、同18位のソニーは同3%減とマイナス成長が予想されている。

Intelは、ラップトップの販売の伸び悩みが足かせとなっている模様だ。同社は、十分な電子コンポーネントをPCメーカーが調達できていないことから、CPUの注文も減少することとなったことを原因としている。一方、Intel Foundry Service(IFS)は、第3四半期に最初のウェハを出荷したとしており、今後、ファウンドリ事業がどこまで売り上げを伸ばせるかが成長の鍵を握るとみられる。

一方のソニーのマイナス成長の背景としてIC Insightsでは、半導体の供給不足によってPlayStation 5(PS5)が目標出荷台数に届かなかったことを挙げているが、PS5のSoCはAMD製であり、その売り上げはAMDに計上されており、筆者が確認したところ、誤りであることを認めた。

実際のところは、ソニーが10月28日に行った2021年7~9月期の決算説明会にて、同四半期のイメージイングおよびセンシングソリューション(I&SS)分野およびイメージセンサの売り上げがともに前年同期比9%減とマイナス成長となったことを明らかにしており、その背景としてモバイル機器向けイメージセンサの減収があることが挙げられている。ソニーにとって、HuaweiはAppleに次ぐハイエンドスマホ用イメージセンサの大口顧客であったが、米国の輸出規制によりHuawei向け半導体の出荷が禁止された影響を反映した結果と思われる。この穴埋めとして、他社に拡販して数量は伸ばしたものの、平均販売価格が下落したことで、穴が埋めきれなかったものとみられる。

  • ソニー

    ソニーイメージセンサ事業の2021年度(2022年3月期)第2四半期(7~9月期)の売上高減少とその理由 (出所:ソニー、2021年10月28日公表資料)