名古屋大学(名大)と東北大学は11月17日、惑星形成の母体となる原始惑星系円盤全体(およそ100天文単位)で取り扱う、精密かつ統一的な計算機シミュレーションにより、0.1μmサイズのダストから1万kmサイズの惑星までの成長過程を解明したと発表した。

同成果は、名大大学院 理学研究科の小林浩助教、東北大大学院 理学研究科の田中秀和教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

太陽系のような惑星系は、原始惑星系円盤の中で形成されることが知られているが、原始惑星系円盤の中でどのように惑星が形成されるのか、よくわかっていない部分も存在している。

原始惑星系円盤の中で惑星が形成される最初の過程は、0.1μmサイズのダスト(微粒子)が、衝突・合体をくり返して「ブドウの房」のような形状で大きくなっていき、小石のような微小天体(ペブル)となり、それらがさらに衝突合体を繰り返し、やがて小惑星、岩石惑星サイズの原始惑星へと成長していくと考えられている。

さらに、原始惑星の質量が地球程度では止まらず、その10倍ほどの質量になると、重力も非常に強くなり、より急速に大量のガスを集積するようになる。しかし、こうした重い原始惑星は、巨大ガス惑星の固体核となり、大量のガスを周囲から集めることで巨大ガス惑星となるとされているが、その形成過程のすべてが明らかにされているわけではないという。

ガス集積を起こせるほど大きくなるために成長している最中の固体核は、周りの原始惑星系円盤との重力相互作用により、角運動量を失い、らせん軌道を描きながら少しずつ中心星に向けて落下していく。問題は、これまでの研究では、固体核がガス集積を起こすほど十分に大きくなるよりも10倍以上短い時間で、固体核が中心星(太陽系の場合は太陽)に落下してしまうことが導き出されていた点にある。しかし、現実には木星や土星は太陽系に存在していることから、その矛盾が説明できていなかったという。

  • 惑星形成

    惑星形成の概念図 (出所:東北大プレスリリースPDF)

これまでの固体核の成長を調べる研究では、微惑星がまず形成され、微惑星の群れの中から1つずつ固体核が形成され、固体核が残りの微惑星を集積して成長するという微惑星集積モデルで考えられてきた。一方で、近年、微惑星よりもずっと小さい小石サイズの天体が集積することで固体集積時間を短縮し、巨大ガス惑星形成を成し遂げるという小石集積モデルが考案され、盛んに研究が進められた結果、固体核は落下しながらも成長をし続け、ぎりぎりで巨大ガス惑星になれる可能性が示唆されるようになってきたという。

しかし、このモデルでも固体核に集積されずに落下してしまい、原始惑星系円盤の中のすべての固体質量が小石として固体核付近を移動しても、材料が足りなくなって巨大ガス惑星を作る固体核にまで成長できないという問題があったという。

こうした従来モデルが問題を抱えている理由は、微惑星と固体核、または小石と固体核など、限られた天体に限定して扱っていたことだとされるが、実際の惑星形成を扱うためには、ダストのサイズから巨大なガス惑星まで40桁以上の質量進化を正確に扱う必要があり、それが難しかったためである。

そこで研究チームは今回、ダストから固体核がガス集積を起こすまでの衝突成長過程を、統一的に取り扱うことができるシミュレーション法を開発することにしたという。数学的な正確性を担保して、それぞれのサイズでの必要な物理を過不足なく取り扱うこと、そして最新のコンピュータを効率よく使用することで、このような膨大なシミュレーションが可能になったとした。

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    惑星形成モデルの比較 (出所:東北大プレスリリースPDF)

開発されたシミュレーションは、これまでのダストだけ、微惑星だけを取り扱ったシミュレーションと同等な精度で計算を行いつつ、ダストから惑星まで広い質量進化が取り扱える点が特徴だという。そのため、「真の惑星形成統一シミュレーション」といえるものを構築することができたと研究チームでは説明している。

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    研究のシミュレーションの結果 (出所:東北大プレスリリースPDF)

統一的なシミュレーションにより、無理なくダストから巨大ガス惑星まで成長できることが確認されたことから、今後、研究が進めば、巨大ガス惑星の形成後に氷微惑星がどれくらい生き残ることができるか、さらに氷微惑星がどれくらい地球のような惑星に運ばれて海の形成に寄与するかということもわかるようになると研究チームでは説明しているほか、原始惑星系円盤と系外惑星を理論的に結びつけて議論することで、惑星形成過程の理解や検証が進んでいくことが期待されるとしている。

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    新しい惑星形成の概念図 (出所:東北大プレスリリースPDF)