名古屋大学(名大)と豊田中央研究所(豊田中研)は11月17日、大容量のデジタルデータを受信可能なカーボンナノチューブ(CNT)1本からなる、ナノスケールのアンテナを開発したと発表した。
同成果は、名大 未来材料・システム研究所の大野雄高教授、豊田中研の舟山啓太研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、ナノマテリアルの応用を扱う学術誌「ACS Applied Nano Materials」にオンライン掲載された。
無線電波の送受信に用いられるアンテナは、受信信号(電磁波)の波長により大きさが決まっており、小型化することが難しいという課題がある。
今回の研究では、受信信号を機械振動に変換し、それを電気信号に戻す機械振動子アンテナ技術に着目。その素材にCNTを採用することで、アンテナサイズをナノスケールに小型化することに成功したという。
実際に作製された機械振動子アンテナは、1本のCNTからなる片持ち梁が、小さな空間を介して微小電極と対向している構造を持っており、この微小電極とCNT間に直流電圧をかけることで、CNT先端から電子が飛び出して電流が流れるという仕組み。そこに、外部から信号(電磁波)が照射されるとCNT内の電子に静電力が働き、到来信号に合わせてCNTが機械的に振動。CNTと微小電極間の距離によって、両者間を流れる電流の大きさが変化することで、その電流値に受診した信号情報が反映されるという。
実際にカラー画像のデータを受信した際の動作実証が行われたところ、符号誤り訂正といったデジタル通信技術を組み合わせることで、ノイズ下においても0.93bit/Hzという高い通信性能を達成。これは、80MHzの帯域幅において、約70Mbpsの通信速度を実現可能であることを意味しているという。
なお、研究チームによると、今回開発されたナノアンテナとデジタル通信技術の組み合わせは、さまざまな信号検出にも応用可能であるとのことで、今後、生体内や大気中の情報など、これまで不透明だったさまざまな情報を直接的に検出できる可能性を秘めているとしている。