豊橋技術科学大学(豊橋技科大)は11月15日、全固体リチウムイオン二次電池(LIB)用の固体電解質である「Li7P3S11」の液相合成において、誘電率から特徴づけられる溶媒の極性が結晶性Li7P3S11の形成に重要な役割を果たすことを実証したこと、ならびに調べた8種類の溶媒中、「アセトニトリル」(ACN)がLi7P3S11の液相合性にとって最適な反応溶媒であることを実証したことを発表した。
同成果は、豊橋技科大 電気・電子情報工学系の蒲生浩忠大学院生、同・永井篤志特任准教授、同・松田厚範教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
全固体リチウムイオン二次電池の実用化が期待されているが、そのためには高イオン伝導性を示す硫化物固体電解質の大量合成技術が要求されており、そうした固体電解質の合成方法の中でも液相合成が、低コストかつ量産に適しているため、有力視されているという。
また、液相から合成したLi7P3S11固体電解質は高い導電率を示すため、全固体LIB用固体電解質の候補の1つとなっているが、結晶性Li7P3S11の液相合成に及ぼす溶媒の影響については、系統的な調査がこれまでなされていなかったという。そこで研究チームは今回、さまざまな物理的・化学的特性を有する8つの有機溶媒を選択し、Li7P3S11の液相合成における反応に溶媒種が与える効果を明らかにすることにしたという。
検討の結果、8種類のうちで「1,4ジオキサン」(Dox)と「テトラヒドロピラン」(THP)、ACNの3種類の溶媒を用いることで結晶性Li7P3S11が形成され、高い誘電率を持つ有機溶媒において、より高い導電率が得られるという傾向が見出されたという。
また、高い誘電率を持つ溶媒を適用した試料ほど、熱処理過程において高い温度で脱溶媒和を引き起こすことも確認されたほか、乾燥処理の観点から低沸点の溶媒が好ましいといった観点などもあり、そうした複合的な特性から、ACNが高伝導性を有する結晶性Li7P3S11の液相合成にとって、最適な反応溶媒であることが実証されたという。
なお、研究チームは今回の成果に対し、全固体LIBのための固体電解質の有力候補であるLi7P3S11の液相合成において、Li7P3S11固体電解質の高い導電率を実現するための溶媒選択として重要な指針が見出されたと考えているとしており、今後、今回の成果をもとに、全固体LIBの量産技術開発に発展させたいとしている。