北里大学の設置法人である北里研究所と花王は11月16日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体(K-874A)をハムスターモデルに対して経鼻投与することで、肺におけるウイルス増殖を抑制できることを確認したと発表した。

同成果は、北里大、花王、Epsilon Molecular Engineering(EME)の研究グループならびに、慶應義塾大学医学部坂口光洋記念講座(オルガノイド医学)、同内科学教室(呼吸器)、生理学研究所らで構成される研究チームによるもの。詳細は米国科学雑誌「PLOS Pathogens」で公開された。

  • VHH抗体

    VHH抗体の概要 (資料提供:北里大/花王)

北里大、花王、EMEの3者は2020年5月に新型コロナウイルスに対して感染抑制能を有するVHH抗体の取得に成功。今回の研究は、その作用機序の解明や新型コロナ治療薬としての可能性検証を目的に行われたものとなる。

具体的には、新型コロナウイルス(KUH003:Accession number LC630936)に感染させたシリアンハムスターを、グループ1(VHH抗体非投与群、プラセボ2回投与群)、グループ2(VHH抗体投与群-1回投与:感染直前)、グループ3(VHH抗体投与群-1回投与:感染1日後)、グループ4(VHH抗体投与群-2回投与:感染1日後および2日後)の4群に分け、その体重変動と肺におけるウイルス量の比較を行ったという(シリアンハムスターは新型コロナに感染すると体重が減少する)。

  • VHH抗体

    シリアンハムスターを4群に分けたVHH抗体の評価実験の概要 (資料提供:北里大/花王)

その結果、VHH抗体を投与しなかったグループ1のみ体重の減少が確認され、新型コロナに感染したことが示されたという。また、肺におけるウイルス量は、VHH抗体を投与しなかったグループ1と比べ、残りの3グループでは少ないことも確認。VHH抗体が新型コロナの増殖を抑制したことが示されたと研究チームでは説明する。

  • VHH抗体

    シリアンハムスターを用いた評価実験の結果 (資料提供:北里大/花王)

なお、今回は経鼻投与を実施したが、その結果、初期増殖部位の鼻咽頭、口腔そして肺へ直接治療薬が届き、効率良く治療することができるようになったと考えられると研究チームでは説明しているほか、感染前にVHH抗体を経鼻投与しておくことで、症状の緩和やウイルス増殖の抑制がみられたことから、軽症・中等症向け治療薬としてのみならず、予防薬としての可能性も示されたとしており、今後、実用化に向けた検討を進めていくとしている。