攻めのDXの基盤となる「Oracle Cloud」

一方、攻めのDXの基盤となるテクノロジーが、同社のパブリッククラウドクラウドサービス「Oracle Cloud」だ。「Oracle Cloud」は、SaaSの「Oracle Cloud Applications」とIaaS/PaaSの「Oracle Cloud Infrastructure」から構成されている。

三澤氏は、Oracle Cloud Applicationsについて、「競合は、オンプレミスのアーキテクチャのアプリケーションをAWSのような汎用的なクラウドサービスに乗せて、SaaSとして提供している。これに対し、オラクルはアプリケーションを全面的に作り替えて、大企業でも利用可能なピュアSaaSを作り上げた」と、競合のSaaSとの違いを強調した。

オラクルは同社のクラウドサービスの強みとして、ミッションクリティカルなシステムの利用に適していることを掲げているが、三澤氏はそれを具現化した事例の一つとして、野村総合研究所(NRI)を紹介した。

NRIは自社データセンターに導入していた「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」に、投資信託の窓販業務ソリューション「BESTWAY」を移行し、2021年7月より稼働開始した。「BESTWAY」は、銀行での投資信託の販売を総合サポートする共同利用型システムで、110社以上に採用されている金融SaaS。

「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」は、「Oracle Exadata Cloud Service」を含むオラクルのパブリック・クラウドサービスを顧客のデータセンターで利用可能なマネージド・クラウド・リージョンを提供するもので、OCIを顧客のデータセンターで利用することを可能にする。

これからのDXは社会課題解決に貢献していくべき

続いて、NRIの専務執行役員 IT基盤サービス担当を務める竹本具城氏が講演を行った。竹本氏は、「コロナ禍で、働き方のパラダイムシフトが起きた。コロナ禍が終息しても、生活スタイルは戻らないのではないか。われわれの調査では、デジタル化が浸透した今の生活に慣れたとする回答が20%に達している。また、コロナ禍は意識変容ももたらした。今後、社会課題を受けて意識はさらに変容していくと考えられる。変容した新たな価値観は実在社会を考える一つの要因となる。今まで、企業は収益に重きを置いていたが、これからは社会課題の解決との共存に取り組む必要がある」と、これからの企業の在り方を説明した。

  • 野村総合研究所 専務執行役員 IT基盤サービス担当 竹本具城氏

こうした中、NRIは「DX3.0」を提言している。「1.0は、今までのビジネスモデルの中で変革してきた。2.0はビジネスモデルを変革した。そして、3.0は企業や業界だけでは達成できない。共創を通じて社会課題を解決していく必要がある」と竹本氏。

  • 野村総合研究所が提言するDX 3.0とは?

しかし、竹本氏は「日本はデジタル化が遅れている。DX3.0までの道のりは遠い」と指摘した。日本では、アジャイル開発、デザイン思考、DevOpsの活用が少ないという。同氏は、DXを進めていくにはクラウドの活用が必要であり、クラウドを最新のテクノロジーが提供されるプラットフォームとして活用していくべきだとの考えを示した。

NRIでは、自社のサービスを展開していくにあたり、機敏性の確保と最新のテクノロジーの活用において、プライベートクラウドでは不安があったことから、「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」を専用パブリッククラウドとして導入したそうだ。

竹本氏は、Oracle Dedicated Regionについて、高可用性とアジリティを確保し、金融サービサーとしての統制を実現するとともに、同社のDX推進のドライバーとなってくれることを期待すると語っていた。