東北大学は9月10日、東北メディカル・メガバンク計画において、3世代コホート調査に参加した妊婦を対象として、産後1年までの産後うつの経過とそれに関わる心理社会的リスク因子の分析を行った結果、産後1か月と同様に産後1年でも同程度となる1割強の母親に産後うつが出現すること、産後1年にうつ症状を呈した母親のうち、約半数は産後1か月時点ではうつ症状を呈していない遅発型であることが判明したことを発表した。
同成果は、東北大大学院 医学系研究科(兼東北大学病院)の菊地紗耶助教、同・富田博秋教授、東北メディカル・メガバンク機構の村上慶子講師、同・小原拓准教授、同・栗山進一教授らの研究チームによるもの。詳細は、うつ病から心的不安まで情動障害を学際的に広く扱っている学術誌「Journal of Affective Disorders」にオンライン掲載された。
出産後3日以内に悲しさや惨めさなどの感情が出現し、2週間以内に治まるとされるマタニティーブルー。しかし、そこから顕著な抑うつ症状が数週間から数か月間続き、日常生活に支障が出ることで、うつ病の診断基準を満たす状態になる場合、「産後うつ(病)」と呼ばれ、出産後、約10~20%の女性に発症すると試算されている。
これまでの多くの研究が行われ、産後数か月時点での有病率や心理社会的因子などが扱われてきたが、産後1年が経った時点で、産後数か月時点に比べて有病率が高いかどうかについては、結果が一致していない状況だったという。
そこで研究チームは今回、東北メディカル・メガバンク計画が実施している、三世代コホート調査に参加した2万2493名の妊婦のうち、必要な項目に対して有効回答が得られた1万1668名を対象とし、産後1年までのうつ症状の有病率およびうつ症状の経過の調査を実施した。
その結果、産後1年時点で、12.9%の母親にうつ症状があり、それは産後1か月(13.9%)とほぼ同等であることが判明したという。また、産後1年にうつ症状を呈していた母親のうち、約半数は産後1か月時点ではうつ症状を呈していない、「遅発型」だったことも明らかになったという。
また、産後1か月と1年のうつ症状の経過から4群に分けたところ、persistent(持続群)が6.0%、recovery(回復群)が7.9%、late-onset(遅発群)が6.8%、resilient(正常群)が79.2%であることが判明したほか、妊娠中の心理的不調が、うつ症状のあるすべての群で有意に関連していることも確認されたという。
なお、研究チームでは、今回の研究成果を踏まえ、産後1年経過してもうつ症状が出現するリスクに注意し、産後直後だけでなく、より長期的な視点に立ってスクリーニングやケアの体制を構築する必要があることを示唆していると説明している。