Samsung Electronicsは9月2日、スマートフォン(スマホ)向けCMOSイメージセンサとして、0.64μmピクセルサイズで2億画素を実現した「ISOCELL HP1」、ならびに高速オートフォーカスが可能な5000万画素品「ISOCELL GN5」の2製品を発表した。

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    「ISOCELL HP1」と「ISOCELL GN5」のイメージ

ISOCELL HP1は、低照度環境での撮影に向け、新たにChameleon Cell(カメレオンセル)と呼ぶ技術を採用。これは、環境に応じて2×2、4×4、またはフルピクセルレイアウトを切り替えるピクセルビニングテクノロジー(隣り合う画素の情報をひとまとめにする技術)だという。これにより、暗い環境では16個の隣接するピクセルをマージし、2.56μmの大きなピクセルを備えた12.5MPイメージセンサとして活用されることとなり、これにより暗い環境下であっても、明るく鮮明な写真が得られるようになるという。

また、視野での損失を最小限に抑えつつ30fpsで8Kビデオを撮影できる。隣接する4つのピクセルをマージして、解像度を50MPまたは8192×6144に下げることで、画像の解像度全体をトリミングまたは縮小することなく、8K(7680×4320)でのビデオ撮影を可能にしたとしている。

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    ISOCELL HP1に採用されたピクセルビニングのカメレオンセル技術 (出所:Samsung)

一方のISOCELL GN5は、全方向オートフォーカス技術「デュアルピクセルプロ」を統合した1.0μmピクセルサイズのCMOSイメージセンサで、オートフォーカス機能を大幅に向上させることができる。同技術は、2つのフォトダイオードをセンサの各ピクセル内に水平と垂直に配置することで、すべての方向のパターン変化を認識することを可能としたもの。センサのすべての領域をカバーする100万個の位相検出多方向フォトダイオードにより、オートフォーカスの高速化を可能年、いかなる環境でも鮮明な画像をとらえることを可能にしたという。

また、独自のピクセル技術として、デュアルピクセル製品に適用した「フロントディープトレンチアイソレーション(FDTI)」も搭載されているという。これは、微細なフォトダイオードのサイズにもかかわらず、各フォトダイオードがより多くの光情報を吸収して保持できるようにしたもので、フォトダイオードのフルウェル容量(FWC)の向上や、ピクセル内のクロストークの減少を図ることができるようになったとしている。

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    ISOCELL GN5に採用されたデュアルピクセル・フロントディープトレンチアイソレーション(FDTI)技術 (出所:Samsung)

高画素数化を進めるSamsung、高画質化を進めるソニー

スマホ向けのような小型CMOSイメージセンサでは、高画素化のためにピクセルサイズを小さくすると、センサに入る光量が減少し、撮像性能は低下するとされてきた。この課題の解決に向け、SamsungはChamereon Cellと呼ぶ技術を活用し、隣接する画素をまとめ、疑似的に1画素として扱うことで、解像度を落とす代わりに光量を増やす手法を採用した。

一方、スマホ向けCMOSイメージセンサ分野でシェアトップのソニーは、画素サイズを可能な限り大きくすることで、高画素数化よりも高画素品質化を優先させてきた。同社のCMOSイメージセンサの最大顧客であるAppleは高画質化を重視し、最新世代であるiPhone 12でも1200万画素に留まっている。

なお、2020年のCMOSイメージセンサシェアを見ると、かつて5割を超えていたソニーのシェアが40%にまで減少している。これは同社のCMOSイメージセンサの顧客としてAppleに次ぐ取引量のHuaweiへの輸出が米国の輸出規制により難しくなったことが大きいが、もう1つ、Samsungが引き金を引いた高画素化競争も影響していると思われる。こうした動きはソニーも理解しており、これまでの高画質化という方向性に加え、高画素化に向かう方向性も今後、進めていく模様である。