昨年、SNSを中心に話題を呼んだ「アマビエ」。

アマビエは、江戸時代後半に肥後の海に現れ「今年から6年間、諸国は豊作となるが、疫病もはやる。はやく私の姿を写して人々に見せなさい」と予言したという言い伝えから、アマビエの絵には疫病退散のご利益があるとされ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の終息を願う人々からのアマビエの絵の投稿がSNSなどに寄せられた。

そのアマビエが描かれた記念品を宇宙に打ち上げるプロジェクトが、SpaceBDが主催する日本国内外の研究機関・教育機関・民間企業から集められた研究用素材や記念品を宇宙空間に打ち上げ曝露する「スペースデリバリープロジェクト」の一環として行われる。

スペースデリバリープロジェクトは、SpaceBDが国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」の中型曝露実験アダプタ(IVA-replaceable Small Exposed Experiment Platform: i-SEEP)の利用事業者として選定されていることから対象品を宇宙空間に打ち上げ曝露を行うというもの。

これまで研究目的が多かった曝露サービスの裾野を広げる目的で、記念品などにも対象を広げたのが特徴だ。

SpaceBD自身も記念品を打ち上げることとなり、何を打ち上げるか社内で話し合った際に、疫病終息を願うアマビエがいいのではないかという声が出たのだという。

アマビエが描かれた記念品は、同プロジェクトに協力企業として参加するコアマシナリーの表面加工技術を用い、アルミ板にレーザーで加工したもの。

  • アマビエ

    スペースデリバリープロジェクトの一環として宇宙に打ち上げられるアマビエ

大きさは縦約6㎝、横3㎝、厚み0.5㎜となっている。

同社の希望として、神社でお祓いをしたものを打ち上げたいとの想いがあったといい、9月6日に江島神社にて打ち上げの安全と疫病終息を祈る祈願祭が執り行われた。

  • アマビエ

    お祓いを受けるアマビエが描かれた記念品

江島神社は「龍神信仰」に基づいた神社だ。龍神は天候・天空を守護すると言い伝えられており、龍神が空を舞う姿とロケットが重なる点や、空に打ち上げるロケットの安全祈願ということで江島神社での祈願を決めたという。

集められた記念品や研究対象品とともにアマビエは、2021年度内にSpaceXのロケットで打ち上げられ、ISS日本実験棟「きぼう」のi-SEEPに搭載する新たな小型簡易曝露実験装置(Exposed Experiment Bracket Attached on i-SEEP: ExBAS)で約6か月間宇宙空間で曝露され、2022年6月ごろに地球に戻る予定だという。

地上に戻ったアマビエは、江島神社に奉納され、一般にも公開される計画だ。

ちなみに祈願祭の最中に雷が鳴っていたのだが、雷は「神が鳴る」とされ、神の意志が宿るとされているのだという。江島神社の神職によれば「空の龍神様が喜んで雷が鳴ったのではないか」とのことで、SpaceBDにとっても幸先の良い祈願祭となったのではないだろうか。