東京医科歯科大は8月30日、2021年7月上旬から7月末までの期間において、東京医科歯科大学医学部附属病院への入院または通院歴がある新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者から、デルタ株(B.1.617.2 系統)の市中感染事例が急増していることを確認したほか、8月中旬の 新型コロナ患者から検出したデルタ株から、アルファ株主要変異(N501Y)の類似変異「N501S変異」を有する新たなデルタ株の市中感染事例を確認したことを発表した。
同成果は、同大大学院医歯学総合研究科ウイルス制御学分野の武内寛明 准教授・医学部附属病院病院長補佐、同 難治疾患研究所ゲノム解析室の谷本幸介 助教、リサーチコアセンターの田中ゆきえ 助教、ウイルス制御学分野の北村春樹 大学院生および関口佳 大学院生らによる入院患者由来SARS-CoV-2全ゲノム解析プロジェクトチームと、統合臨床感染症学分野の具芳明 教授、木村彰方 理事・副学長・特任教授および貫井陽子 医学部附属病院感染制御部・部長らによる共同解析によるもの。
6月下旬ころは、デルタ株(B.1.617.2 系統)ならびに英国地域流行デルタ株(AY.4 系統)の市中感染が増加していることが確認されていたが、7月中旬以降になるとB.1.617.2 系統のみが確認されるようになっており、 AY.4 系統株のデルタ株の市中感染拡大における寄与度は低いものと考えられるという。
また、今回確認されたたアルファ株主要変異(N501Y)の類似変異であるN501S変異を有する新たなデルタ株(B.1.617.2 系統)は、日本で新たに変異を獲得した可能性が高いことも判明したという。
N501S変異を有するデルタ株(B.1.617.2 系統)は、これまでに世界でも8例のみ報告されているだけで、国内では今回が第1例目の報告となるという。ただし、現時点においては変異発生要因の判断が難しく、さらなる性状解析および疫学調査が必要となるとしている。
研究チームでは、今後も強固な感染予防対策を継続すると同時に市中感染株の推移をモニタリングし、ウイルス流行の実態を把握することが公衆衛生上の意思決定に重要であると考えるとコメントしている。
