ispaceは8月25日、同社の子会社であるispace Europe SA(ispace Europe)、カナダの航空宇宙企業スターダスト・テクノロジーズ(スターダスト社)、豪州・シドニー工科大学(UTS)、豪州の航空宇宙企業エクスプローラー・スペース・テクノロジーズ(エクスプローラー社)との間で、月資源利用の実装を目指すIn-Situ Resource Utilization(ISRU:現地で入手可能な資源を利用すること)を目的とし、VRや触覚技術を活用する多目的ロボットアームを搭載した月面探査ローバーを共同開発するための覚書を締結したことを発表した。

今回の覚書では、参加各社が以下の4点を中心とする項目を検討することが計画されているという。

  1. 宇宙資源や宇宙医療、STEM教育のための仮想現実や触覚技術を利用したロボットアームと、そのアームを制御するソフトウェアの開発に協力する。
  2. ispaceが開発する月面探査ローバーにスターダスト社、UTS、エクスプローラー社が開発するロボットアームと3Dカメラを搭載。そのローバーをispaceが開発するランダー(月着陸船)に搭載して、ispaceのミッション3以降において月に輸送する。
  3. 科学的および商業的宇宙資源利用の目的で得られた月のデータと分析結果の取得および交換を行う。
  4. カナダ宇宙庁と豪州宇宙庁に、将来の月面ミッションのための技術開発、研究、打ち上げそのほかのミッション費用のための助成金を共同で申請する。

この共同開発の目的は、最終的に月の南極を探査し、月の資源を分析・収集することだという。コンセプトとしては、触覚技術を備えたロボットアームを月面探査ローバーに搭載し、360度のカメラを装備することで、地球上の人々が月面探査ミッションを仮想現実で体験できるようにすることだとした。月面探査ローバーは、ispaceがミッション3以降の次世代モデルとして開発する予定としている。

覚書の調印は、米・コロラド州コロラドスプリングスにおいて、現地時間8月26日まで開催されている第36回スペース・シンポジウムの会期中に行われた。調印式には、調印者に加えて在米豪州大使館の代表者がこの覚書を支援するオブザーバーとして参加したという。

なお、今回の覚書における構想実施のスケジュールは現時点では未公開で、詳細な情報は、今後改めて発表を予定しているという。

  • HAKUTO-R

    ispaceが計画している月探査ミッション「HAKUTO-R」(2022年に月面着陸、2023年に月面探査の計2回)のうち、2回目のミッションで運ばれる予定の超小型ローバーのイメージ (c)ispace (出所:ispace Webサイト)