NXP Semiconductorsはオランダ時間の6月28日、5G基地局に向けたGaNベースのパワーアンプ(PA)モジュールを発表したが、これに関する説明が国内でも行われたので、この内容をご紹介したい。

まずマーケット概略。NXPによる基地局のトレンドがこちら(Photo01)。

  • NXP

    Photo01:Massive MIMOとかmmWaveはどちらも5Gで入って来た新機能ではある

4Gまでとの大きな違いはmmWave、それとMassive MIMOの対応が必要な事というのはその通りである。mmWaveはそもそも作り方が変わってくるのでおいておくとして、Massive MIMOの場合、アンテナそのものの数が大量に増えるし、それぞれ別のPAが必要になってくる(Photo02)。

  • NXP

    Photo02:Beam Formingまで行うとなると、今度はPAの前の段階での制御も必要になる。こちらはこちらで別のソリューションが大量に存在する(例:ミリ波の例だがこれとか)

32T32Rとか64T64Rとなると、そもそもPAそのものが32組とか64組必要になるという事もあり、小型化や高効率化、低価格化が必須な流れになっているとする(Photo03)。

  • NXP

    Photo03:こうした課題へのNXPの回答が、GaNベースのモジュール化である

こうした課題に対するNXPの基本的なソリューションがLDMOSからGaNへの移行と、周辺コントローラまで含めたモジュール化である(Photo04)。

  • NXP

    Photo04:ちなみにこの下のロードマップだとLDMOSベース製品を全部GaNモジュールで置き換える様に見えなくもないが、実際はLDMOS製品も引き続き提供してゆくとの事

まずモジュール化のメリットだが、ディスクリートで組み合わせるよりも小型化や低コスト化が可能になるとしている(Photo05)。

  • NXP

    Photo05:これはまぁよくある話である。顧客としてはまとめて入手できるし実装の手間も省けるし、NXPとしては従来他社製品が使われていた周辺チップまでまとめてNXPから買ってもらえる訳で、双方にメリットがあるという訳だ

このモジュール化にあたっては、従来ディスクリートの形で存在していたBIAS Controllerまで搭載された、としている(Photo06)。

  • NXP

    Photo06:従来BIAS Controllerは他社製だったが、モジュールに搭載されているのはNXP製とのこと

次がGaNの搭載。同社はこれまでPA向けには積極的にLDMOSを採用してきており、実際価格性能比という事ではまだLDMOSに軍杯が上がるが、その一方で効率とか帯域に関して言えばGaNの方が優れているとしている(Photo07)。

  • NXP

    Photo07:また絶対出力で言えばLDMOSの方が上だが、これも周波数が上がってくるとLDMOSでも出力が減る傾向にあり、周波数が上がるほどGaNの方が有利という話であった

同社は昨年9月、アリゾナ州にRF GaNのFabを開設しており、GaNデバイスの安定供給が可能になったという事も大きいとする(Photo08)。

  • NXP

    Photo08:ここは元々Motolora(その後Freescale)の200mmウェハのFabがあり、そこにRF GaNの設備を追加した格好

さてそのモジュールだが、基本はこんな感じである(Photo09)。

  • NXP

    Photo09:プリドライバは性能や価格を考えた結果LDMOSのままで行くことにしたとの事

同社はこれを「RapidRF」と称している(Photo10)。

  • NXP

    Photo10:このまま製品に実装することも不可能ではないサイズに収まっている

核になる部分は21mm×34.5mm程度。モジュール全体でも57mm×38.5mmとかなり小さい(Photo11)。

  • NXP

    Photo11:コネクタを除くとかなり小さく収まっているのが判る

さてそのモジュールであるが、現在出荷中のものはLDMOSベースのスタンダードモデルであり、今後まずBIASコントローラを内蔵したものを第3四半期に、PAをGaNベースに置き換えたものを第4四半期に投入予定であるとする(Photo12)。

  • NXP

    Photo12:ただこのモジュール同士には互換性があり、後で差し替えも可能との話であった

スタンダードモデルは対応する動作周波数や出力別に3種類がラインナップされており、いずれも500ドルでディストリビューターなどから購入可能である。また必要な設計資料も同社からすでに提供開始されているとの事である(Photo13)。

  • NXP

    Photo13:レイアウトその他や購入リンクなどもこのページにまとまっている