中国は2021年6月17日、建設中の中国宇宙ステーション(CSS)に向けて、宇宙飛行士3人を乗せた宇宙船「神舟十二号」を打ち上げた。中国の有人飛行ミッションは約5年ぶり。

神舟十二号は打ち上げから約6時間後にCSSに到着。宇宙飛行士たちは約3か月間の長期滞在に臨む。

  • 神舟十二号

    聶海勝宇宙飛行士、劉伯明宇宙飛行士、湯洪波宇宙飛行士の3人を乗せた「神舟十二号」宇宙船の打ち上げ (C) CMS

神舟十二号の打ち上げとミッション

神舟十二号を載せた長征二号Fロケットは、日本時間6月17日10時22分(北京時間同日9時22分)、甘粛省北西部にある酒泉衛星発射センターから離昇した。

ロケットは順調に飛行し、打ち上げから約573秒後に神舟十二号を分離。所定の軌道に投入した。

神舟十二号には、聶海勝宇宙飛行士、劉伯明宇宙飛行士、湯洪波宇宙飛行士の3人が搭乗。コマンダー(船長)を務める聶氏は今回が3回目の宇宙飛行、劉氏は2回目、湯氏は今回が初となる。

神舟十二号はその後、軌道変更を行い、徐々にCSSへ接近。自動でランデヴーし、そして16時54分、CSSの「天和」モジュールの前方ポートにドッキングした。なお、ドッキングの直前には、航法に使う光学カメラに、ステーションの反射した像が映り込んだことで、システムにエラーが発生したが、パラメーターの調整により問題なくドッキングしている。

その後、ドッキング部の気密チェックなどを経て、19時48分には、3人の宇宙飛行士が天和の中に入った。3人の健康状態などは正常だという。

3人は今後、今年9月までの約3か月間CSSに滞在。天和モジュールの試験や、生命維持システムの検証のほか、ロボットアームの試験と操作訓練、宇宙飛行士自身の健康管理、物資と廃棄物の管理など、宇宙ステーションの運用や宇宙生活にとって必要な技術や能力の実証を行う。

また、5月にCSSへ打ち上げられ、現在ドッキング中の無人補給船「天舟二号」からの物資の搬出、設置作業も行う。

さらに、宇宙飛行士による2回の船体活動も予定されており、ツールボックスやカメラの設置など、ステーションの組み立て作業も行うほか、宇宙での科学実験や技術試験、広報・教育活動なども行う。

中国による宇宙飛行ミッションは、2016年の「神舟十一号」以来、約5年ぶりとなる。また、CSSへの有人飛行ミッションは、これが初めてとなる。

CSSは中国が建造中の宇宙ステーションで、今年4月29日に最初のモジュールとなる天和の打ち上げに成功した。今後、2022年の夏ごろまでに、実験室モジュール「問天」、「夢天」を打ち上げ、結合させて完成する予定となっている。また2024年ごろには、宇宙望遠鏡モジュール「巡天」の打ち上げ、追加も予定されている。

天和はCSSの中核となるモジュールで、生命維持システムや推進システム、通信システムなどを装備し、宇宙飛行士の生活や、ステーション全体の制御や姿勢を担う。

CSSへの有人飛行はこれからも定期的に行われ、神舟十二号と3人の宇宙飛行士が帰還したあと、今年10月には新たに3人の宇宙飛行士を乗せた「神舟十三号」が打ち上げられ、約半年間滞在。その後も交代時以外はほぼ途切れることなく、宇宙飛行士が滞在し続ける予定となっている。

打ち上げ成功を受け、米国航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン長官は「中国が宇宙ステーションへ宇宙飛行士の打ち上げに成功したことを祝福します。これからの科学的発見を楽しみにしています」との声明を発表している。

  • 神舟十二号

    神舟十二号に乗り込むため発射台へと向かう聶海勝宇宙飛行士、劉伯明宇宙飛行士、湯洪波宇宙飛行士 (C) CMS

搭乗した3人の宇宙飛行士

聶海勝氏

聶海勝氏は1964年生まれで、現在56歳。中国人民解放軍空軍の戦闘機パイロットとして活動したのち、1998年に中国の第1期宇宙飛行士候補に選ばれた。

訓練を経て、2005年10月に「神舟六号」宇宙船に費俊龍宇宙飛行士とともに搭乗し、宇宙へ出発。約5日間の宇宙飛行に成功した。

2013年には「神舟十号」に搭乗し、2回目の宇宙飛行士に出発。宇宙ステーション実験機「天宮一号」に約2週間滞在し、CSSの建造に向けた礎を築いた。

今回が3回目の宇宙飛行で、コマンダー(船長)を務める。

劉伯明氏

劉伯明氏は1966年生まれで、現在54歳。中国人民解放軍空軍の戦闘機パイロットとして活動したのち、1998年に中国の第1期宇宙飛行士候補に選ばれた。

訓練を経て、2008年9月、「神舟七号」宇宙船の3人のクルーのひとりとして宇宙飛行を実施。コマンダーのタク志剛(※1)氏とともに、船外活動用の宇宙服を着て、中国初の船外活動を成し遂げた。

今回が2回目の宇宙飛行となる。

湯洪波氏

湯洪波氏は1975年生まれで、現在45歳。中国人民解放軍空軍のパイロットとして活動したのち、2010年に宇宙飛行士候補に選ばれた。訓練を経て、2016年に打ち上げられた神舟十一号ではバックアップ・クルーを務めた。

今回が初の宇宙飛行となる。

  • 神舟十二号

    左から、湯洪波宇宙飛行士、聶海勝宇宙飛行士、劉伯明宇宙飛行士 (C) CMS

中国宇宙ステーションの建造・運用計画

2021年

  • 4月29日……天和モジュールの立ち上げ
  • 5月29日……天舟二号の打ち上げ
  • 6月17日……神舟十二号の打ち上げ
  • 9月ごろ……神舟十二号の地球帰還、天舟三号の打ち上げ
  • 10月ごろ……神舟十三号の打ち上げ

2022年

  • 3月ごろ……神舟十三号の地球帰還
  • 3月~4月ごろ……天舟四号の打ち上げ
  • 5月ごろ……神舟十四号の打ち上げ
  • 5月~6月ごろ……問天モジュールの打ち上げ
  • 8月~9月ごろ……夢天モジュールの打ち上げ
  • 10月ごろ……天舟五号の打ち上げ
  • 11月ごろ……神舟十五号の打ち上げ、神舟十四号の地球帰還(約10日間、両ミッションのクルー計6人が同時滞在)

(中国の宇宙開発フォーラム『航空航天港』に投稿されたリーク資料より翻訳・作成)

脚注:※1……タクは「羽」の下に「隹」

参考文献

http://www.cmse.gov.cn/xwzx/yzjz/202106/t20210616_48135.html
http://www.cmse.gov.cn/xwzx/yzjz/202106/t20210616_48134.html
http://www.cmse.gov.cn/xwzx/yzjz/202106/t20210616_48123.html
http://www.cmse.gov.cn/xwzx/yzjz/202106/t20210616_48136.html