中国国家航天局は2021年5月29日、中国宇宙ステーションへの補給物資を搭載した無人補給船「天舟二号」の打ち上げに成功した。

補給船は打ち上げから約8時間後にステーションとのドッキングに成功。6月中に予定されている3人の宇宙飛行士の到着、滞在に備える。

  • 天舟二号

    天舟二号を搭載した長征七号ロケットの打ち上げの様子 (C) CASC

天舟二号

中国は現在、独自の宇宙ステーション「中国宇宙ステーション」の建造を進めており、4月29日には最初のモジュールとなる「天和」の打ち上げに成功した。

天和は同ステーションの基幹となるモジュールで、生命維持システムや推進システム、通信システムなどを装備し、宇宙飛行士が生活したり、ステーション全体の制御や姿勢を司ったりといった役割をもつ。

今後2022年の夏ごろまでに、実験室モジュール「問天」、「夢天」を打ち上げ、結合して完成する予定となっている。また2024年ごろには、宇宙望遠鏡モジュール「巡天」の打ち上げ、追加も予定されている。完成時の質量は約90tで、現在運用中の国際宇宙ステーション(ISS)、かつてソ連・ロシアが運用していた「ミール」に次ぐ規模となる。

「天舟」は、この中国宇宙ステーションに物資を補給するために開発された無人補給船である。全長は約9m、直径約3.4m、打ち上げ時の質量は約13tで、大型ロケット「長征七号」で打ち上げることで、宇宙ステーションに対して約7tの物資を運ぶことができる。これはロシアの「プログレス」、米国の「カーゴ・ドラゴン」、「シグナス」、また退役した日本の「HTV」を凌ぎ、退役した欧州の「ATV」に次ぐ史上最大級の能力でもある。

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    天舟二号の想像図 (C) CAST

また、現行の天舟は与圧貨物しか搭載できないが、将来的にはHTVやカーゴ・ドラゴンなどのように、宇宙ステーションの船外に設置するための非与圧貨物を搭載できるようにしたバリエーションも開発されるという。

宇宙ステーションとのランデヴー、ドッキングは完全に自律的に行うことができる。打ち上げからドッキングにかかる時間は、6.5時間、8時間、48時間の3つのパターンがあり、ミッションの必要性や打ち上げ時の軌道などの条件などから選択される。

機体の設計は、2011年に打ち上げられた宇宙ステーション実験機「天宮一号」、2016年に打ち上げられた同二号をもとにしている。天舟の1号機となる「天舟一号」は2017年4月に打ち上げられ、天宮二号との自動ランデヴー、ドッキングや、燃料の補給といった試験を実施。天舟そのものの試験に加え、宇宙ステーションを運用するために必要な技術実証にも成功した。

今回打ち上げられた「天舟二号」は、初の実運用ミッションであり、そして中国宇宙ステーションに物資を補給する最初のミッションであり、きわめて重要な使命を帯びている。

天舟二号は長征七号ロケットに搭載され、日本時間5月29日21時55分(北京時間同日20時55分)、海南島にある文昌航天発射場から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約604秒後、ロケットから天舟二号が分離。所定の軌道に投入された。22時17分には太陽電池パドルが正常に展開したことが確認された。

その後、天舟二号は軌道変更を行い徐々に天和に接近。そして打ち上げから約8時間後の5月30日6時1分、天和の後部にあるドッキング・ポートへのドッキングに成功した。

天舟二号には、宇宙飛行士の生活用品のほか、船外活動の宇宙服、宇宙ステーションで使う機器などが約4.7t、天和に補給するための推進剤が約2t搭載されている。

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    打ち上げ準備中の天舟二号 (C) CAST

今月には宇宙飛行士を乗せた宇宙船が打ち上げ

なお、6月17日ごろには、有人宇宙船「神舟十二号」が打ち上げられる予定となっている。神舟十二号には、聶海勝宇宙飛行士、鄧清明宇宙飛行士、叶光富宇宙飛行士の3人が搭乗する予定となっている。聶氏は、2005年に神舟六号で、2013年には神舟十号で宇宙を飛んだ経験のあるベテラン。鄧氏と叶氏はこれが初の宇宙飛行となる。

3人は到着後、ステーションの機器の立ち上げや、今回天舟二号で送られた物資の搬入作業などを行う。

神舟十二号と宇宙飛行士は、ステーションに約3か月間滞在したのち、今年9月ごろに帰還。その後、新しい補給船「天舟三号」が打ち上げられ、また10月には新たに3人の宇宙飛行士を乗せた「神舟十三号」が打ち上げられ、約半年間滞在する予定となっている。

中国宇宙ステーションの建造・運用計画

2021年

  • 4月29日……天和モジュールの立ち上げ
  • 5月29日……天舟二号の打ち上げ
  • 6月17日……神舟十二号の打ち上げ
  • 9月ごろ……神舟十二号の地球帰還、天舟三号の打ち上げ
  • 10月ごろ……神舟十三号の打ち上げ

2022年

  • 3月ごろ……神舟十三号の地球帰還
  • 3月~4月ごろ……天舟四号の打ち上げ
  • 5月ごろ……神舟十四号の打ち上げ
  • 5月~6月ごろ……問天モジュールの立ち上げ
  • 8月~9月ごろ……夢天モジュールの立ち上げ
  • 10月ごろ……天舟五号の打ち上げ
  • 11月ごろ……神舟十五号の打ち上げ、神舟十四号の地球帰還(・約10日間、両ミッションのクルー計6人が同時滞在)

(中国の宇宙開発フォーラム『航空航天港』に投稿されたリーク資料より翻訳・作成)

  • 天舟二号

    天舟二号の想像図 (C) CMSE

参考文献

http://www.cnsa.gov.cn/n6758823/n6758838/c6812080/content.html
http://www.cnsa.gov.cn/n6758823/n6758838/c6812081/content.html
https://www.cast.cn/news/7045