東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、IT・ソフトウエア業界の2021年1-3月のM&A発表件数は48件で、1-3月としては2012年以降の10年間では、2020年の47件を上回り過去最高を更新した。取引金額は約1兆897億円で、こちらも1-3月としては2012年以降の10年間では2016年の約3655億円を上回り、過去最高を更新した。

2回目の緊急事態宣言と重なったものの、IT業界の旺盛な事業強化の動きに伴い件数が大きく伸びたのに加え、1兆円を超える大型の案件があったため金額も大きく膨らんだ。

  • IT・ソフトウエア業界の1-3月のM&Aの推移

取引金額のトップは日立製作所の1兆円超

取引金額のトップは日立製作所が米国のIT企業グローバルロジック(カリフォルニア州)を買収すると発表した案件で、買収金額はグローバルロジックの有利子負債を含めた約96億ドル(約1兆422億円)。

日立ではグローバルロジックの子会社化で、ITやエネルギー、鉄道、モビリティー(移動手段)、ヘルスケアなどの先進的な社会インフラのDX(デジタルトランスフォーメーション)を世界規模で加速する。

取引金額の2番目は婚活サイト運営のイグニスが、MBO(経営陣による買収)による株式の非公開化を目的に、米大手投資ファンドのベインキャピタルと組んでTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した案件で、買付代金は約263億円。

目まぐるしく変化するスマホ向けアプリ開発事業で、機動的な意思決定を可能にすることを狙いに非公開化に踏み切ることにした。

TOBの実施主体はi3(東京都千代田区)で、同社はイグニスの銭錕社長、鈴木貴明取締役CTO(最高技術責任者)が各25%、ベインキャピタル傘下企業が50%を出資して設立した企業。

金額の3番目は土木工事積算システムのビーイングが、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した案件で、買付代金は約44億9300万円。

土木積算分野依存から脱却し事業の多角化を進めるうえで、非公開化による機動的な意思決定が行える経営体制が望ましいと判断した。

同社会長の津田能成氏が代表取締役を務めるトゥルース(津市)がTOB(株式公開買い付け)を実施し、全株式を取得する。

このほかに、取引金額が30億円台、20億円台が1件ずつ、10億円台が4件、10億円未満が10件、金額非公表などが29件あった。