注目を集めている企業のひとつがServiceNowである。Now Platform を軸にした姿勢はそのままに、IT管理サービス(ITSM)の提供に留まらず、従業員管理や顧客管理をはじめ、同社がビジネス領域を拡大するなかで、新たな働き方や新たな姿を求める企業にとって、ServiceNowが最適なツールとなっている点が見逃せない。なぜ、いまServiceNowが注目を集めるのか。そして、日本において、どんな取り組みを行うのか。ServiceNowの村瀬将思社長に話を聞いた。

  • ServiceNow Japan 執行役員社長 村瀬将思氏

    ServiceNow Japan 執行役員社長 村瀬将思氏

2020年は、ServiceNowにとってどんな1年でしたか。

村瀬:先ごろ発表したServiceNowの2020年通期売上げ実績は、前年比31%増の45億1900万ドルとなりました。コロナ禍においても、着実に成長を遂げています。フォーチュン500社のうち、約80%がServiceNowを利用しており、年間契約金額が100万ドルを超える顧客数は1093社となり、ServiceNow利用企業の契約更新率は98%を維持しています。また、売上げ成長や顧客数の拡大にあわせて、社員数も増加しており、全世界で1万3000人の体制となり、2020年だけで約2000人の社員が増加しています。日本では、私が2016年1月に社長に就任してからの約5年間で、社員数は7倍に増加。数百人規模の体制となっています。全世界22カ所にデータセンターがありますが、2019年には、東京と大阪の国内2カ所にデータセンターを開設しました。日本は、Tier1マーケットと位置づけられており、積極的に投資を行っている市場のひとつです。

なぜ、ServiceNowはこれだけ高い成長を遂げてられたのでしょうか。

村瀬:2020年は、新型コロナウイルスの影響で、世界が大きく変わり、日本では東京オリンピック/パラリンピックが延期になりました。そして、国際間の行き来が分断され、仕事や教育、生活の多くがデジタル上のやりとりへと大きく移行した1年でもありました。人々の働き方が強制的に変更され、人々の価値観が変わった結果、デジタル変革が加速し、距離や時間が圧縮され、新たなつながり方や働き方が定着し、いまでは、デジタル変革の必要性を否定する人は誰一人いなくなりました。そうした変化のなかで、従業員がどんなところにいても、リモートであっても、高い生産性を維持しながら働ける環境を構築したり、デジタル化することで、お客様へのサービスを高めたい、新たなサービスを提供したいといったニーズが高まり、そこに、ServiceNowがお役に立てたといえます。ServiceNowは、ITのワークフローの企業という印象だったものが、企業のデジタル変革のためのワークフローを実現する企業であるというイメージが強くなったのではないでしょうか。

実際、出社管理ワークフローを導入したり、サーモカメラとの連携など、数多く事例が生まれています。従業員の健康状態と職場復帰への準備状況を可視化したり、従業員の検温状況とガイドラインへの適合状況を確認したり、マスクなどの衛生用品や防護用品が欲しいという現場の要望を可視化したりといった仕組みをServiceNowで構築するケースが相次いでいます。また、サーモカメラとの連携事例では、体温が高い人を検知し、それによって入場ゲートを閉めるだけでなく、職場の危機管理責任者に連絡したり、ビル管理会社に消毒のリクエストを出したり、助成金の申請などにも活用したりといったことが可能になります。感染者が発生した場合には、Outlookのスケジュールデータをもとに、過去3週間の接触履歴を表示するといった仕組みも短期間に構築できます。可視化したデータをもとに、正しい判断を促し、対策に生かせるといったことができるわけです。

  • With コロナとニューノーマル

米ロサンゼルスでは、ドライブスルー方式でPCR検査を実施しましたが、これを支えるITシステムとしてServiceNowが動いていました。ServiceNowのパートナー企業が、わずか48時間でポータルサイトを作り、多くの人が手軽に申し込んでPCR検査を受けられるようにし、さらに質問に対しては、チャットボットで対応できるようにしました。ServiceNowでサービスをデジタル化し、人々が便利にサービスを受けられるようにし、それによって、人の命を救うことができた事例のひとつです。

現在は、新型コロナウイルスのワクチン開発からワクチン接種への移行を手助けするためのワークフローや、ワクチン接種を管理するワークフローにも取り組んでおり、そのための機能を、ServiceNowのプラットフォームであるNow Platformにすでに実装しています。

日本ではどんな事例がありますか。

村瀬:広島県では、職員の健康管理に活用したり、県民が感染者と接触した可能性があることを知らせるサービスのなかでも、ServiceNowが利用されています。またカルビーでは、従業員の出社率状況を把握するためのアプリを、わずか8営業日で開発し、運用を行っていますし、アフラック生命保険では、全社や事業所別の出社率を管理するシステムを実質的には数日で構築しました。とにかく速いというのが、ServiceNowの特徴です。ただ、デジタル変革が必要なことは頭では理解をしているが、様々な事情があって、なかなか動き出すことができない、というお客様の声も数多く聞いています。部門ごとにサイロ化したシステムが導入されており、これが阻害要因となって、全社横断が前提となるデジタル変革が進まないということも多々あります。コロナ禍での変化を捉えて、DXに取り組む企業と、そうでない企業との二極分化が起こる可能性を感じます。しかし、私たちがやりたいのは二極化の促進ではなく、日本のすべての企業の底上げです。ServiceNowは、サイロの壁を打ち破るアーキテクチャーであり、その点では、唯一無二存在だと自負しています。800ものAPIを標準で提供しており、作り込まなくても利用できるアプリケーションが数多く用意されています。日本では、ハンコの押印をデジタル化するといった点が話題になっていますが、その部分だけをデジタル化しても意味がありません。100個あったプロセスを半分以下に減らしたり、全体をいかに自動化していくかということを考えていかなくてはいけません。また、物事がこれだけ速く変わるのにあわせて企業が変わるためには、エグゼクティブ自らが変化に参画する必要があります。変革を他人任せにした途端に、それは自分ごとではなくなります。変化の先にどんな自分がいるのかということをエグゼクティブ自らが考えて、変化に参画することが大切です。ServiceNowは、日本の企業をデジタル変革によって底上げしたい。そのためのサポートを行っていきたいですね。

  • カルビーの事例