京都大学(京大)は1月25日、「エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性原発性乳がん」に対する経口フルオロピリミジン「S-1」と内分泌療法の併用による乳癌術後療法の効果検証の結果、中等度~高度の再発リスクを有するER陽性HER2陰性原発乳がん患者における有望な治療オプションになり得る効果を得たと発表した。
同成果は、京大医学研究科の戸井雅和教授、京大 医学部附属病院の髙田正泰助教らの研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「The Lancet Oncology」にオンライン掲載された。
乳がんは女性で最も罹患率の高いがんだ。そのうち、約70%を占める最多のサブタイプが、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんである。ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんは、術後に少なくとも5年間の内分泌療法を行うことが標準となっている。検診の普及や薬物療法の進歩により乳がんの予後は全体として改善してきているが、術後長期にわたる再発リスクが報告されているなど、未だに改善の余地があるという。
予後の改善のため、内分泌療法の延長投与、化学療法の併用などがこれまでも検討されてきた。S-1などの経口フルオロピリミジン(化学療法)は、転移性乳がんの疾患進行を抑制する役割を果たすことが示されている。そこで研究チームにより今回、ER陽性HER2陰性原発性乳がん患者を対象に、標準的な術後内分泌療法にS-1を併用することで、予後に改善が見られるのかの臨床試験を実施した。
研究チームでは、得られたデータから、S-1と内分泌療法の併用は、中等度~高度の再発リスクを有するER陽性HER2陰性の原発乳がん患者における有望な治療オプションになり得る結果が得られたとしている。また、長期にわたる観察によりS-1併用の生存率への寄与を評価することが、今後の課題と考えられるとしている。