今後、普及が期待されている次世代移動通信システムで2020年に商用ローンチされた「5G」。今回、ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ バイスプレジデント アナリストの池田武史氏に、2021年の展望について語ってもらった。

  • ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ バイスプレジデント アナリストの池田武史氏

    ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ バイスプレジデント アナリストの池田武史氏

多様なテクノロジーの1つが5G

--企業において5Gを、どのように捉えれば良いでしょうか?

池田氏:5Gは単品のテクノロジーの話ではなく、流行る・流行らないという切り口にすると、そこまで5Gはインパクトはありません。なぜかと言うと、5Gだけが脚光を浴びるのではなく、5GによりDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速していくという捉え方をすべきだからです。

5Gは現実の世界をタイムリーに記録し、さまざまなデータと比較・分析などを行い、例えばビジネス上の意思決定などに活かすことが望ましい使われ方です。これまでは培った勘や経験、実績にもとづいていたものですが、デジタルは現在起きている状況をリアルタイムに近い形で網羅的に把握して、それに基づいた分析を行います。

クラウドやモバイル、IoT、AIなど新たなテクノロジーにおけるテクノロジーの1つが5Gです。この視点が抜けて5Gだけで物事を考えてしまうと、どのように役立つのか噛み砕けないのが実情です。PoC(Proof of Concept:概念実証)はやってみたが、うまくいかないこともあり、AIやIoTのときと同様の轍を踏む可能性があります。

日本は新しいテクノロジーが登場した際に群がる傾向にありますが、理解した上で活用法を模索している間に次のテクノロジーに目移りすることを、ここ3年ほど繰り返していると感じます。そのため、今年はそのような5Gの付き合い方ではなく、本格的に浸透させて一歩進んでいくことが重要です。

5Gは「高速」「低遅延」「高密度」というキーワードで語られていることは周知の事実ですが、これらのキーワードだけでビジネスを考えることは悩ましいものです。基本的には医療、教育といった各種現場作業の「人とモノ(システム)」、鉄道、港湾、空港をなどを管理する「モノとモノ(システム)」、エンターテイメントや放送をはじめとした「人と人」など、ビジネス上のインタラクション(相互作用)はすべて対象になります。

--5Gをどのように適用していくべきでしょうか?

池田氏:どのように5Gを適用するべきなのかについては、スマートシティや医療、教育、スポーツ観戦など多くのことが語られています。しかし、ある程度の方向性を持って取り組もうとする際に、急に発想が陳腐になってしまっているのではないかと思います。

そのため、今年は企業にとってビジネス面で5Gが大事なことは本格的な取り組みをスタートする年にしなければなりません。ユーザー企業にとってはイマジネーションが重要となります。

つまり、自社の未来、デジタルの社会の行く末をイメージしなければ、5Gのメリットが判然としない状態となってしまうため、イマジネーションを働かせるべきです。

また、ベンダーにとって2020年は5Gの準備期間であり、特に大手の国内ベンダーは5Gに本格的に取り組みました。そのため、クリエイティビティを自社のソリューションに落とし込まなければなりません。