まずはグランドデザインを描く
--5Gという新しいテクノロジーに注目する前に、自社におけるデジタル戦略を明確にするべきだと?
池田氏:そうです。私自身は、よくグランドデザインを描きましょうと提言しています。最初は拙いグランドデザインしか描けないかと思いますが、さまざまなことに取り組むと徐々に詳細が見えてきます。
大事なことは自社だけでなはく、エコシステムのため顧客、パートナーも関わることから、グラインドデザインが固まった段階で共有し、受け入れられるようであれば取り組んでみようとなり、ベンダーなども巻き込んだオープンイノベーションとすれば、形にはなります。
これまでの日本は官公庁、業界団体を中心に一気に進めていこうしていましたが、この状況だといつまでも良いアイデアが出ません。
--今年はサービス化が本格化していくフェーズになりますか?
池田氏:現状ではフェーズ2の状態であり、半年~1年遅れでチップやRAN、コアネットワーク、運用のソフトウェアなど5Gのインフラ機器そのものの量産化が進むものと思われます。
一方で、ローカル5G向けの機器は試作品、ないしは高額な通信事業者向け製品しかないため、工場内に設置しようという盛り上がりには違和感を覚えます。Wi-Fiですら整備できていないところもあるにもかかわらず、高額な製品を導入しても大丈夫なのかとは思いますね。
しかし、スマートシティなど多くの取り組みを日本では実施しているため、少しづつ役立つシーンが見れるのではないかと感じています。昨年は時期尚早であり、商用ローンチはしたものの、ローカル5Gも4G設備ありきのノンスタンドアローンで実施しなければならなく、割り当てられた周波数帯も28GHz帯しかありませんでした。
また、5Gのテクノロジーとしてはマルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)、ネットワーク・スライシング、ソフトウェア・ディファインド・インフラストラクチャなどがあります。
5Gが本格的にデジタルを支える技術か否かの肝となるため、多様なテクノロジーの融合が必要になっています。そのようなことから、ベンダーは力量を付け、ユーザー企業は無線インフラ、クラウドなどのテクノロジーを身につけなければなりません。
そのため、サービス化は2~3年後が現実的です。現状のままであれば現場の状態を把握できないまま、日々のタスクをこなすことだけになってしまうことから、的確に把握できるようになれば精度の向上が期待できるため、そこを信じて取り組んでいる側面もあります。半年~1年でなにかできるというよりは、経験していくことが大事になっていきます。