2016年にリリースされたゲームアプリ『ポケモンGO』を皮切りに、AR(Augmented Reality:拡張現実感)技術に対する世間の認知度は高まってきている。筆者が大学1回生のとき、周りの友人や街中で見かける人々が、神社の鳥居や道路の電柱に向かってモンスターボールをひたすら投げていたことを鮮明に覚えている。
最近では、『ポケモンGO』以外にもARを活用したさまざまなサービスが普及し、新しいライフスタイルが構築されるのもそう遠い未来の話ではないはずだ。
そして、今、ARを活用したショッピング体験も注目を集めている。
サイバーエージェント子会社であり3Dスキャニングから3DCG動画コンテンツの制作・運用を行うCyberHuman Productions(以下、CHP)と、ARクリエイティブ事業を行うMESONは2020年7月28日より、3DCGデータを活用しAR領域のブランド体験ユースケースを探求する共同プロジェクトを開始した。
その第一弾として、ARグラスを活用した時代のショッピング体験をテーマにした「PORTAL with Nreal(ポータル ウィズ エンリアル)」の体験ブースをサイバーエージェントが所有するカムロ坂スタジオに国内初として常設展示し、企業やメディア向けに公開している。
そこで今回、カムロ坂スタジオにお邪魔し、自宅などからの利用を想定した「ARショッピング」を体験してきたので、その様子をお届けしたい。
ARグラス「NrealLight」を活用した新しいショッピング
今回の体験で使用したのは、中国のスタートアップ企業Nrealが提供するメガネ型ARグラス「NrealLight(エンリアルライト)」。NrealLightはスマートフォンと接続することができ、重さは88gとかなり軽量だ。グラスから見るバーチャル空間ではスマートフォンからポインターが発せられ、このポインターでさまざまな操作ができる。
NrealLightを装着し、専用アプリを起動すると目の前のテーブルにフィギュアのように小さくてかわいいモデルが現れた。
ポインターを合わせ、PCマウスのドラック&ドロップの要領で、モデルをつかみテーブルから移動させると、フィギュアサイズのモデルが等身大でスタイル抜群の3Dモデルへと変化した。
テーブルに現れたモデルは何人でも等身大に表示することができ、男性モデルと女性モデルは自由に切り替えることができる。
等身大になったことにより、アイテムのサイズ感や素材感をリアルに近い感覚で感じることができた。それだけでなく前後左右の360度や、少し遠目などさまざまな視点でモデルを見ることができ、自分がそのアイテムを着ているときのイメージが鮮明に湧いた。
気に入ったアイテムがあれば、アイテムの横に表示されている「ADD TO CART」をクリックすることで、壁に表示される仮想ショッピングカートへと自動的に追加され、シームレスに購入することが可能だ。
また商品購入後、ブランドから購入特典としてブランドの世界観を可視化し体感できる「Room Filter(ルームフィルター)」がプレゼントされた。
このフィルターにより、買い物するときだけでなく、普段からARグラスを通じて空間デザインを体感することができ、オブジェとしてインテリアを楽しむなど、日常生活にブランドの世界観を取り込むことが可能だ。
高次元な3Dモデルを実現するスキャニング技術
3DCGによるファッションモデルやアイテムは、実際に存在する人物・物をもとにしてCHPの3Dスキャニング技術により生み出されている。一眼レフカメラを134台使用している3Dスキャンスタジオは圧巻だった。
「ARショッピング」を体験してみて
ARショッピングを一通り体験して感じたことは、自宅のような離れた場所でも店舗以上に便利で楽しい買い物ができるなあ、ということ。時間を節約することもできるし、昨今の新型コロナウイルスのような感染症が蔓延したとしても、非対面で問題なく買い物をすることができるだろう。
普段は、ECサイトなどを使わずに実際の商品が見たり試着したりしてから購入したいと思う派だが、ARグラスを使った今回のような買い物なら試着をしなくてもいいかな、と感じるほどだった。
アニメ『ソードアートオンライン』のような近未来SFが好きな「中二病」をこじらせている筆者は、レーザーのようなポインターによる操作、近未来的な操作音といったことに終始興奮していた。