新型コロナウィルス感染症の流行は世界的な危機となっています。スマートフォン、テレビ、ラジオからは暗いニュースが多数流れてきますが、明るいニュースに耳を傾けることも重要です。産業界では人と人との接触が控えられる中で、協力への動きも出ています。電子部品業界も例外ではなく、競合企業と協力するケースも増えています。
こうした状況の中でDigi-Keyが企業の使命として掲げているのは、ユーザーに電子部品を届けながら、従業員の健康を守ることです。すでに、世界の従業員約4000名の中で2300名以上が在宅勤務に就いています。配送センターでも従業員の健康を守るために新たなプロトコルを次々に採用しており、従業員もこれに積極的に対応しています。
日本では緊急事態宣言が発令されるとすぐに、セールス、サポート、テクニカル・アシスタンス・チームのスタッフ全員が在宅勤務に移行し、緊急事態宣言期間中にも医療やビジネスの重要なニーズに対応するため、製品の供給や調達の面でユーザーをサポートしました。
このようなサポートと並んで、Digi-Keyでは新型コロナウィルス危機の克服に貢献する技術開発を行っています。
従業員を守る紫外線殺菌トンネル
新型コロナウィルス感染症が世界の人々の大きな関心事項となる中で、Digi-Keyでは職場でのソーシャル・ディスタンスの確保と消毒を積極的に実行してきました。特に難しいのが、従業員とモノとの接触による感染の予防です。Digi-Keyでは受領、ピッキング、パッキング部門を通じて取り扱われる製品の数が日々8000個超に達しており、誰が最後にその荷物に触れたのかを把握できる現実的な手段はありません。
こうした課題を克服するため、専門のチームを結成し、まず、手掛かりに消毒薬品の噴霧機械の導入を検討しました。多くの学校が閉鎖されていたことから、チームは地域の学校から噴霧機械を借り、配送センターに配置しました。しかし、消毒薬を噴霧するだけでは不十分で、製品を適切に消毒するためにはさらに新たな革新的機械が必要であるとの認識に達しました。ですが、こうした機械は入手が困難な状況が続いていました。このため、製品の効率的な消毒と同時に配送センターの環境に必要な携帯性を備えた新しい機械を開発することになりました。
チームが開発を決定したのは、核酸とDNAの破壊により微生物を殺し不活性化する紫外線殺菌照射(UVGI)装置です。早速開発が始まり、配送センターのベルトコンベヤーのカーブ部分に4.5mの紫外線殺菌トンネルを迅速に取り付けることに成功しました。この新開発のトンネルはUVライトの使用により、日々8000個超の製品を殺菌する能力を持っており、従業員のウィルス感染リスクを低減することに成功しました。
この装置は、社内で使用するだけでなく、業界の他のメンバーとも情報を共有することで、業界全体の従業員の健康確保にも役立てられています。現在、Digi-Keyのデーブ・ドハティ社長は米国電子部品産業協会(ECIA)で他のディストリビュータと協力することで、従業員やユーザーの健康を守るためのアイデアやベスト・プラクティスの共有を推進しています。
米ミネソタ大学の人工呼吸器開発を支援
Digi-Keyのもう1つの新型コロナ感染予防プロジェクトが、米ミネソタ大学の医師グループによる新しいオープンソース人工呼吸器「Coventor」開発計画の支援です。この人工呼吸器はサイズがコンパクトでコストが低く、すぐにスケーリングが可能なことが特長です。
これまで、病院で医療グレードの自動人工呼吸器の不足が発生した場合、訓練を受けた医療スタッフが1対1で用手圧迫を行わざるを得ませんでした。手動式のバッグバルブマスクの圧搾と開放を繰り返せば、スタッフの身体的な疲労度は極限に達します。Coventorの開発により、訓練を受けた医療スタッフが複数の患者を同時にモニターできるようになりました。
Digi-KeyはこのCoventorへの部品供給を優先的な業務課題とし、リソースの確保や設計のサポートなどに取り組みました。 その業務はケーブル・アセンブリなどの必要部品の迅速な提供が可能なベンダーの確保、必要な部品の特定、サプライチェーンの構築など、多岐に及んでいます。政府機関の協力も得られ、Coventorは新型コロナウィルス感染症の流行に対する米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可を最初に取得した人工呼吸器となりました。また、Coventorはオープンソース・デバイスとして世界のメーカーによる迅速なコピー生産も可能です。
Digi-KeyではCoventorプロジェクトのほか、非接触体温計、手指消毒剤の非接触ディスペンサー、遠隔対応に使用される機器など、新型コロナウィルス感染症の診断と治療の最前線で使用される医療機器に必要な部品の供給にも、責任を持って取り組んでいます。