小惑星探査機「はやぶさ2」が着地した小惑星「りゅうぐう」は、炭素を極めて多く含む岩石や砂粒に覆われていることが、観測データから分かった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が11日発表した。地上からの観測や探査中の画像などから概ね理解されていたが、データの詳しい分析により科学的に裏付けられた形だ。炭素が生命の条件である有機物に含まれている可能性もあるという。

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    小惑星「りゅうぐう」を探査する「はやぶさ2」の想像図(池下章裕氏提供)

はやぶさ2の光学航法カメラによる半年間の観測データを分析した結果、りゅうぐうの地表は反射率が1.87パーセントと極めて低く、炭素の含有量が2パーセント以上とかなり高いことが分かった。

りゅうぐうは有機物や水を含むタイプの小惑星に分類される。地球上の有機物や水は小惑星から降り注いだとの仮説があり、はやぶさ2が地球に持ち帰る試料の分析が注目されている。オンラインで会見したスペイン・カナリア天文物理研究所の巽瑛理(たつみ・えり)博士研究員は「炭素が有機物の形で入っていることは大いに考えられる。試料の中に有機物が期待できるのでは」と述べた。

また中間赤外カメラによる熱の観測とモデル計算から、地表に広がる岩石の凹凸が極めて大きいことも確認した。JAXA宇宙科学研究所の嶌生有理(しまき・ゆうり)研究開発員は「激しい凹凸で知られる米ハワイ州のキラウエア火山などの『アア溶岩』と同程度のもの」という。インスタントコーヒーの粒のように隙間が多いのも特徴だ。

はやぶさ2は年末の地球帰還に向け、現在は地球から約1億3000万キロの位置を航行中で、イオンエンジン(電気推進エンジン)連続運転を8月末までの計画で実施している。その後は9月までに軌道の微調整を行い、イオンエンジンの運転を終える。往復の航行実績は48億6000万キロに達し、残すところあと3億8000万キロとなった。

JAXA宇宙科学研究所の月崎竜童助教は「イオンエンジンは(チームが)何もすることがないほど順調で、トラブルは考えにくい」とした。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、はやぶさ2チームは相模原市にある管制室への入室人数を制限し、離れた位置に着席するなどの対策を取っている。航行計画への影響は生じていないという。

はやぶさ2は2014年12月に地球を出発し、18年6月から昨年11月までりゅうぐうに滞在。2回の着地で、地表と地下の試料を採取できたとみられている。帰還時には試料を収めたカプセルをオーストラリアの砂漠地帯に投下する。その後は残りの燃料を利用し、さらに別の天体に向かうことが検討されている。

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    はやぶさ2が2019年3月に撮影した小惑星りゅうぐう(JAXA、東京大学など提供)

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