宇宙船を操縦してみたい? そんな夢を叶えてくれるWebコンテンツを、米SpaceXが公開している。もちろん、本物の宇宙船を操縦するというわけにはいかないものの、この「ISS Docking Simulator」は、同社が開発中の有人宇宙船「Crew Dragon」で使われている実際のインタフェースを元にしているという。
スペースシャトルが2011年に退役して以来、米国は国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士の輸送をロシアのソユーズに依存してきた。当然、米国にとっては望ましい状態では無く、現在、SpaceXとBoeingの2社にそれぞれ宇宙船を開発させているところ。今後、貨物に続いて宇宙飛行士の輸送も民間に担わせる計画だ。
SpaceXのCrew Dragonは、2019年3月に初めて、無人での飛行実証に成功。5月27日(現地時間)に実施する2回目のデモでは、いよいよ宇宙飛行士を乗せて打ち上げ、ISSに向かわせる予定だ。なおその後の運用初号機には、日本の野口聡一宇宙飛行士が搭乗することもすでに決まっている。
これに先立ち、同社が公開したISS Docking Simulatorは、ISSへのドッキングを体験できるというものだ。Crew Dragonは基本的に、自動制御でドッキングを行うため、通常であれば宇宙飛行士が操縦することはないのだが、非常時に備え、手動での操縦も可能となっている。体験するのは、この手動操縦だ。
シミュレータは、ISSまで距離200mの場所からスタート。ここから、宇宙船をうまく操縦して、ドッキングを成功させるのが与えられたミッションである。
宇宙船の操縦には計12個のボタンを使う。画面左側のボタンは軌道制御用になっており、前後(X)、左右(Y)、上下(Z)の加減速を制御する。一方、右側は姿勢制御用で、上下(ピッチ)、左右(ヨー)、傾き(ロール)の向きを変えることができる。
宇宙船のドッキングが難しいのは、位置だけでなく、姿勢も正確に合わせる必要があるということだ。求められる精度は、位置が0.2m以下、姿勢が0.2°以下というもの。どれか1つでもアウトだと、正常にドッキングできず、失敗になってしまう。さらに、ドッキング時には、速度も表示が青色になるまで抑える必要がある。
地上を走る自動車であれば平面的な動きだけになるが、宇宙ではそれに上下も加えた立体的な動きで制御する必要がある。このあたりはやや特殊な感覚になるので、ちょっと慣れが必要かもしれない。文字で説明しても分かりにくいと思うので、以下の実際のプレイ動画を参考にして欲しい。
筆者によるプレイ動画
位置と姿勢がそれぞれ3軸ずつ、合計6つも自由度があるが、すべてを一度に制御するのは至難の業なので、まずは姿勢を先に合わせるのがオススメだ。姿勢さえ合わせてしまえば、あとは画面中央のマークと、ドッキングポートを示す緑色のターゲットが一致するように位置を動かせば良いだけなのでやりやすい。
このシミュレータはキーボードやマウスによる操作も可能なのだが、実際のCrew Dragonの操作はタッチパネルなので、タッチパネル液晶を備えたノートPCなどでプレイすると、さらにリアル感が増して良いかもしれない。
ところでこのシミュレータの目的はドッキングではあるのだが、じつはドッキングせずに通り過ぎて後部のロシアモジュールを眺めたり、横に移動して日本モジュールに近づいたり、自由に遊ぶことが可能。ISSの3Dモデルはかなりリアルに作られていて楽しいので、ぜひいろいろ試してみて欲しい。
もし勝手に遊んで失敗しても、このシミュレータなら管制官に怒られる心配はないので安心して欲しい。ただ気分を盛り上げるために、とりあえず「Houston, we have a problem」と謝っておこう。