スウェーデンSyncron Internationalの日本法人であるシンクロン・ジャパンは9月上旬に「グローバル製造業/エグゼクティブセミナー2019」を開催し、ものづくり産業の「コトづくり」に向けた産業構造の転換の重要性などの説明を行った。また、それに併せる形で、CMOであるGary Brooks氏とHead of Product Strategyを務めるErik Lindholm氏に世界のサービタイゼーション(サービス化)に向けた潮流などの話を聞く機会をいただいたので、その様子をお届けしたい。

同社は、製造業向けにアフターマーケット(保守ビジネス)の最適化ソリューションを提供するITベンダ。具体的には、例えば自動車が壊れれば、ディーラー持ち込んで修理を頼むことになるが、そのディーラーの手元に必要な部品がタイミングよく在庫としてあるとは限らない。顧客満足度の向上を考えれば、手元になければどこにあるのか、工場なのか、ほかの支店なのか、それとも製造メーカーなのかを把握し、速やかに取り寄せる必要があるが、同社のソリューションを活用することで、そういったシステムを自前で構築するコストや労力を避けつつ、どこに必要な部品があるのか、といったことを見える化できるようになる。

同セミナーでも、Daimler Trucks North Americaが米国での事例として在庫管理の改善が図れたことを明らかにしたほか、島精機製作所が顧客の手元で稼動する装置が故障した際の修理部品の即納率の向上や、手元在庫の適正化に向けた取り組みなどが説明された。

SyncronのCMOであるGary Brooks氏は、「IDCの調査では、世界中のものづくり企業の40%がなんらかのIoTプロジェクトを進めている。IoTを活用して、多くのOEM、最終製品メーカーが製品そのものを売る、という行為から、その製品を使ってもらっている顧客に、どのような価値を感じてもらうか、というサービタイゼーション(サービス化)に移行しようと模索を行っている」と、ものづくり産業の世界的な潮流の変化を説明する。

しかし、コンシューマ向けビジネスを行っている企業であればともかく、BtoBの企業の多くが、ネットワークに接続できていない製品を長期間供給していることも事実。そのため同氏は「企業は2つの事業機会を捉えることができる」とする。1つは、既存のアフターサービスのさらなる効率化をはかり、費用対効果を改善していくこと。もう1つは、サービス化に向けた新たなビジネスモデルの構築を進めるということである。

「我々は長年にわたって、既存のアフターサービスの効率化を図っていくためのソリューションを提供してきたほか、サービタイゼーションを展開していくためのビジネスモデルの構築も進めてきた」と同氏は説明するが、日本のものづくり産業の現状は人手不足により、その既存のサービスを行いながら、新規のサービスも同じ人間が賄う、という現場の負担が大きい、という場合が多々ある。そうした点に対しては、「ビジネスモデルを変える、ということは大きなエネルギーを必要とすることは理解している。これまでの歴史を振り返ってみても、破壊的なイノベーションが生み出され、ビジネスも生活環境も大きく変化してきた。サービタイゼーションという流れも、ものづくりにおける新たなブレークスルーの1つになるかもしれない。そうした流れをしっかりと見極めるのは現場ではなく、経営層の役割だろう。個人的には、これまではものを所有する、ということに価値を見出していた消費者たちが、ある時を境に、必要なときに利用する、という転換点を近い将来、迎えると思っている。すでに映画や音楽といったソフトコンテンツはストリーミングが主流になっているし、こうした流れがハードウェアでも同じく起こると思っている」と、新たなサービスの創出には苦労があることを理解しつつ、そのための支援となるソリューションをSyncronとしても引き続き提供していくことを強調する。

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    Syncronが見るアフターサービス市場における現在のトレンドと将来のトレンドの変化 (グローバル製造業/エグゼクティブセミナー2019におけるSyncronの発表スライドより抜粋)

また、「メーカーはそれほど恐れる必要はない。サービタイゼーションの道のりは、多くのステップがあり、かなりの時間がかかる。ステップバイステップで進めて行くしかない。我々もそうした思いをもつ企業の手伝いをしていきたいと思っているし、IoTセンサで取得したデータを活用することで、どのようにして稼働率の最大化を図ることが可能な予知保全が実現できるのか、といったこともパートナーであるコンサルティング企業を交えアドバイスとして提供することもできると思っている」(Erik Lindholm氏)とのことで、サービス化は段階的に進めていくことが必要であり、そのための知見なども提供できるとした。

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    サービタイゼーションに向けたステップ。「Reactive(通常保守)」から順に、「Preventive(計画保守)」、「Predictive(予兆保全)」、「Proactive(稼働率の最大化)」と移り変わっていき、それぞれのステップで必要となるサービス内容なども変わってくるというのがSyncronの見解 (グローバル製造業/エグゼクティブセミナー2019におけるSyncronの発表スライドより抜粋)

IoT+サービス化で変化するものづくり産業の在り方

こうしたIoT機器からのデータを取得するサービスとして同社は「Syncron Uptime」という予知保全のためのソリューションもすでに展開しているが、これについて同社は、他社が提供しているようなIoTプラットフォームとは競合するものではないとする。「我々は集められたデータに対して、マシンラーニングを活用し、アフターサービスの効率化、設備の稼働率の最大化を図ることを目指している。IoTを活用して、と言っているが、あくまで1つの土台であり、我々のソリューションだけでは不十分。そうした意味ではERPやSCM、さまざまなIoTプラットフォームと連携し、その上で付加価値として我々が価値を提供していく形を目指している」(同)としており、あくまで補完的な立場にあるとする。

また、「IoTの活用とサービス化は、消費者だけでなく、メーカー側にもメリットをもたらす。世界的にESG投資やSDGsといったキーワードが注目されるように、持続可能性といった意味でも風向きが変わってきているが、メーカーがモノを所有することで、これまでは買ってもらって、最終的には廃棄されて埋め立てられる、といった消費行動から、再整備をして、長い期間活用してもらったり、部品を再利用したりすることができるようになる」とBrooks氏はIoTの活用がサービタイゼーションの流れに合致するものであるとし、こうした流れは自動車や重機、生産設備といったものだけに限らないとする。

同社が対象とする分野は、「5年以上の使用に耐えられる製品や保守整備に必要な製品」としており、具体的には「航空・宇宙」、「農業機械」、「自動車・商用車」、「エネルギー・公益事業」、「ハイテク・エレクトロニクス」、「産業機械」、「医療機器」、「建設・鉱山機械」、「石油・ガス」、「鉄道・運輸」、「物流・3PL」、「部品商社・卸」の12分野を挙げている。

「稼働率が顧客にとって重要な機器類を対象にしていると思ってもらえればよい。服を作る機械が壊れれば、服を編めなくなるので、経営に影響がでるが、服そのもののボタンが外れたとしても、別の服を着たり、付け直したりすれば良い問題となる。このように、我々がサービスを提供するのは、顧客が収益を生み出す装置や、その稼働率を高めるという部分であるといえる」と同社では説明するほか、「我々が成功を収めてこれた理由の1つに、対象分野の現状をしっかりと理解して、その課題を見極め、その解消を可能とすることを目指してきたためだ。今後も強みを持つ産業分野に寄り添って、新たな機能を提供していくことを考えている」(Lindholm氏)としており、現状、対象としている12分野以外に市場を拡大していく予定はないとする。

なお、Lindholm氏が語った新機能についてだが、今回の話の中では明らかにされなかった。具体的な内容については、同社が11月にスウェーデンにて開催するグローバルの顧客など対象として開催される年次イベント「INNOVATE2019」にて、発表する予定であるとのことであった。

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    左からSyncron Head of Product StrategyのErik Lindholm氏、同CMOのGary Brooks氏、シンクロン・ジャパン代表取締役社長の落合克人氏 (シンクロン・ジャパンオフィスにて撮影。同社は8月26日付けで新オフィスに移転したばかり)