米オラクルは、9月16日~18日(現地時間)の3日間、米カリフォリニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで、年次イベント「Oracle OpenWorld 2019」を開催している。

  • 「Oracle OpenWorld 2019」の会場であるモスコーニセンター

このイベントには全世界から約6万人が訪れ、オンライン視聴を含めると10万人以上が参加している。会期中には、2,832のセッションが行われ、3,601人のスピーカーが登壇。展示会場では、367社が出展し、523のデモストレーションが実施され、315のミニシアターセッションが予定されている。

また、開発者向けの「Oracle Code One」を一体化する形で開催。こちらでは、3つのキーノートと520のテクニカルセッション、50以上のハンズオンラボなどを用意しているという。

開催初日の基調講演では、米オラクルのラリー・エリソン経営執行役会長兼CTOが登壇。「Gen2 Cloud : Autonomous Infrastructure」をテーマに講演した。ここ数年、AWSとの比較を前面に打ち出した講演を続けているエリソン氏は、今年もその姿勢を変えずに、むしろ例年以上に強調してみせた格好だ。

  • 米オラクルのラリー・エリソン経営執行役会長兼CTO

冒頭にエリソン氏は、「昨年はAutonomous Databaseを発売し、今年はAutonomous に関する、いくつかのサービスの提供に力を入れている。目標としているのは、世界初となる真の意味でのAutonomous Cloudを提供することである」と宣言した。

また、テスラによる自動運転の例を引き合いに出しながら、「毎年3万人の人が高速道路の事故で死亡している。しかし、自動運転に変わり、人的エラーが無くなれば、何万人もの人の命が救われる。Autonomous Cloudは、人がかかわる部分が無くなり、人的エラーが無くなるだけでなく、人への投資も減らすことができる。データの漏洩や盗難も無くなる。フォードのクルマに乗って、飲酒運転をして事故を起こしたら、それはフォードの責任ではなく、運転者の責任である。AWSでは、システムを間違ってコンフィグレーションし、トラブルが発生した場合は、AWSの責任ではなく、使っている企業の責任である。だが、オラクルのAutonomous Databaseは、人が関与しないため、そうした問題が起こらない。プロビジョニング、コンフィグレーション、暗号化、バックアップを自動的に行い、セキュリティも自動化している。それはテスラの自動運転が、家までちゃんと送ってくれるのと同じである。Generation 2 Cloudは、そうした人的被害を防ぐものになる。AWSとの最大の差はここにある」などと語った。

その一方で、エリソン氏は、自らに問いかけるようにこう語る。

「Autonomous Databaseは素晴らしいのはわかるが、しかし、その背後にはOSがある。弱点はOSのコードである。それはどうするのか。そう言いたい人も多いだろう」  エリソン氏は、ここで、OOW 2019の最初の発表として「Oracle Autonomous Linux」を紹介した。

「Oracle Autonomous Linuxは、世界初であり、世界唯一のAutonomous OSになる。Autonomous Databasesと同様に、自律的にプロビジョニング、スケーリング、チューニングを行い、オンラインパッチも自動的に行う。オラクルは、1998年からLinuxに取り組み、2006年にカスタマサポートを開始した歴史があり、今回のOSは20年間をかけて作り上げたものである。99.995%の可用性を持ち、停止やダウンタイムがない。脆弱性が発見されても、利用者が知らないうちに、停止することなくそれが修復されている。レッドハットのLinuxとは大きく異なる。しかも、RedHat LinuxのアプリケーションがOracle Autonomous Linux上でも動作する。RedHatからのマイグレーションも行える。オラクルは無償でOracle Autonomous Linuxを提供する。IBM(RedHat)への支払いをやめることができる」などとした。

  • Oracle Autonomous Linux

Oracle Autonomous Linuxでは、新たなOracle OS Management Serviceを提供。パッチやパッケージ管理、セキュリティおよびコンプライアンスのレポート、構成管理などのLinuxシステムの一般的な管理タスクを実行する機能を自動化できる。また、高度な機械学習と自律機能を使用して、コスト削減やセキュリティ強化、可用性を実現できるとした。

同社では、Linuxユーザーの多くは、Oracle Autonomous Linux を導入することで、5年間で30~50%のTCO削減を期待できるとしている。

一方で、Oracle Autonomous Databaseが、柔軟性を持ち、サーバーレス環境で提供するShared Infrastructureと、プライベートに独立したDedicated Infrastructureの2つの展開オプションがあることを示しながら、「いずれも障害を排除する仕組みとなっており、少なく見積もってもAWSに比べて25倍以上も信頼性が高く、来年には100倍近い信頼性の差が生まれるだろう。また、Amazon RedShiftに比べて7、8倍高速であり、Transaction ProcessingはAmazon Auroraに比べて8~9倍速い。アナリティクスでは7倍速く、アナリティクスとトランザクションを一緒にやろうとすれば、100倍も速くなる。しかも、AWは、時間によって課金されるため、同じワークロードを行うのであれば、AWSの方が何倍も高いということになる。アプリケーションをAmazon Databaseから外して、Oracle Autonomous Databaseに移行すれば、それだけで半分以下のコストになる」などとし、次々とAWSとの比較を行ってみせた。