近年、設備機械の老朽化対策として、劣化リスクに応じた安全対策や長寿命化のための予防保全の仕組み化などを推進する法改正が進んでいます。マイナビニュースは、設備機器メーカーに勤務する会員を対象にアンケート調査を実施。現場では、トラブル発生後の事後対応が常態化しており、人手不足や対応コストの増大といった深刻な課題が浮き彫りになりました。一方、予防保全・予知保全をビジネスチャンスと捉え、環境対応と収益モデル転換を両立させる動きが広がりつつあります。経営者のESGに対する意識格差が広がりつつあることも分かりました。 調査結果をもとに、設備機器メーカー向けに予防・予知保全のSaaSソリューションを提供するビズキューブ・コンサルティングのキーパーソン2人に、設備機器メーカーが抱える課題とその解決策について伺いました。

調査概要

・調査対象:国内の設備機械メーカー 経営者・営業職・経営企画職等
・調査期間:2025年10月
・回答数:322名

──はじめに簡単な自己紹介からお願いします。

藤﨑健一氏(以下、藤﨑氏):店舗・オフィスの物件管理やコスト適正化等の様々なソリューションを提供するなかで、クラウドサービスの事業を推進しています。具体的には、設備機器メーカー向けに、予防・予知保全のSaaSとBPOを提供しています。設備業界に特化し、製品販売後のメンテナンスからリプレイスまでをつなげるCRMを行っています。

加藤秀和氏(以下、加藤氏):CRMをメインとしたBPOディレクターを担当しています。お客様の利益を向上させるために、当社が提供するSaaSの導入時の業務フローの整備、データ設計・整備など、アウトソーシング業務を含めた導入支援を行っています。また、当社サービスのマーケティング、新規案件のリード獲得など幅広く携わっています。

  • 藤﨑健一氏

    藤﨑健一氏

  • 加藤秀和氏

    加藤秀和氏

──調査では、新設案件獲得が「ここ数年は横ばい」61.8%、「減少している」24.2%、計86%で新規案件が増えていないにも関わらず、予防・予知保全の取組みに消極的のように見えます。なぜでしょうか?

藤﨑氏:予防・予知保全のサービス提供先をメンテナンス契約締結先に限定していることが考えられます。<図4:販売した設備における「定期保守メンテナンスの契約率」>では、契約率が30%以上あると答えたメーカーはわずか32.3%でした。67.7%のメーカーは、お客様と定期保守メンテナンス契約を契約できていません。<図2:保守・メンテナンス未契約案件の管理について>では、保守メンテナンス未契約のお客様に対して、67.9%のメーカーが「トラブル対応のみ」または「ほぼ放置状態」と回答しています。つまり、保守メンテナンス契約を締結しない限り、設備を長寿命化させる予防・予知保全サービスを提供はしない。対価を貰える確約(メンテナンス契約締結)あるお客様へはサービス提供するが、対価が未確定(メンテナンス未締結)のお客様に対しては、最小限のサービスに止めるという実態が伺えます。

  • 図1

    図1

  • 図2

    図2

一方、お客様側も法令で点検が義務付けられている設備については、メンテナンスを契約しますが、法令義務が無い設備は、定常コストが発生することを敬遠する傾向があります。「長寿命化するためにコストをかけるよりも、壊れた時に修繕した方が安上がりだ」という購入者心理の現れでもあります。

──設備メーカーはメンテナンスに関する役務と対価のバランスを合理的に行っているようにも思えますが、実際にはトラブル対応にあたって、労働時間の増加や技術者不足による対応遅延などの課題が発生しているようです。

  • 図3

    図3

藤﨑氏:はい。現場の労働環境の悪化、顧客対応の品質劣化、収益効率の悪化の課題が発生しています。というのも、設備機械のトラブルの多くは突発的に発生します。トラブルが発生すると、お客様から「すぐに直してくれ」という要望が昼夜・土日を問わず入ってくるため、計画的な業務遂行ができないわけです。<図3:トラブル対応について最も課題と感じているもの>では、「社員の労働時間増加」「技術者不足による対応遅延」を合わせて53.6%となっており、不測の事態に対応する人材不足が深刻化している現場の姿が見えてきます。

加藤氏:定期保守メンテナンス契約を結んでいれば、保全部門に連絡が入りますが、設問7の結果を見ると、契約率は10%未満がほぼ半数、30%未満までを合わせると7割近くを占めます。メンテナンス契約を締結していないお客様からの苦情やトラブル対応要望は営業に入ってくるので、営業部門の労働時間も長くなるという問題にもつながります。

  • 図4

    図4

また、突発対応による影響は、その他にもあります。「部品の在庫不足」が15.4%とあるように部品調達までのリードタイムが長くなる。といった顧客対応の品質劣化にも派生します。「人件費や部材高騰によるコスト増加」41.2%が表しているように、計画調達できないことにより、収益効率の悪化という課題も見えてきます。

──メンテナンスの経済合理性に照らして、メンテナンス契約を締結しているお客様に対し、予防・予知保全サービスを提供している、というお話でしたが、トラブル対応の課題を伺うと、契約の有無に係わらず、予防・予知保全を提供した方が高い経済合理性になるのではないでしょうか?

藤崎氏:最近、中堅以上の設備メーカー、エンジニアリング会社は、メンテナンス契約の有無に係わらず、突発的な事後保全から計画保全へとサービス変革に取組んでいるようです。その理由は、大きく3つあると考えます。ひとつ目は、労働環境の改善による人手不足の解消。ふたつ目は、既設メンテナンス収益の基盤強化。最後にESG対応の強化です。

  • 図5

    図5

まず、労働環境の改善について、設備メーカーのメンテナンス部門は、迅速なトラブル対応が求められ、プレッシャーのある敬遠されがちな職種です。加えて、修繕技術が属人化しやすく、マニュアル化が進んでいないため、特に若手にとってはハードルが高く、結果として高齢化が進んでいます。 そこで、突発保全を少なし、労働環境を改善するために、予防・予知保全に取り組む企業が増えつつあります。

次に、既設メンテナンス収益の基盤強化です。既設での大きなビジネス機会は、リプレイスです。ところが、普段は放置し、リプレイスする時にだけ営業するだけでは、競合他社へのスイッチリスクは高まります。部材の交換周期に合わせて修繕提案することで、お客様との関係性を築きやすくなります。そうすることで部材の計画調達ができるため、仕入れ率を低く抑え、修繕収入を高付加価値化・ストック収入化ができます。その結果、修繕収入とリプレイス収入とで生涯取引額を最大化させることができます。

そして最後が、ESGへの対応強化です。<予防・予知保全の導入・強化の目的>では、環境負荷の低減が3割程度あります。 国家戦略の一環である「資源循環・サーキュラーエコノミー」方針の中で「長く使う」が明確に打ち出されています。例えば、建築物の省エネ・維持保全関連法(建築物省エネ法・建築基準法 等)では、建築物や設備のエネルギー効率向上・長期利用化を推進する内容となり、資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)の改正では、中古流通、修理・再販など、いわゆる「循環型ビジネスモデル」が新たに制度枠内に位置付けされました。 つまり、設備メーカーとしては、ESGに対する顧客要求の高まりが背景にあります。

──なるほど。設備機械メーカーが予防・予知保全へ取り組まざるを得ないことが分かりました。では、取り組むに当たっての障壁や、解決すべきポイントはどこにあるのでしょうか?

加藤氏:<図6:設備保全管理の業務改善で注力したいポイント>では、労働環境や待遇見直しによる人材採用が圧倒的に多い回答ですが、どの業界でも人手不足なので容易に解決は難しいです。それよりも最少人数で最大の付加価値を創出するメンテナンス業務の計画化を先行させるべきだと思います。

  • 図6:設備保全管理の業務改善で注力したいポイント

    図6:設備保全管理の業務改善で注力したいポイント

メンテナンス業務の非効率化の原因は、設備機器の保全計画情報を利活用出来ていない為に、ムリ・ムラ・ムダが発生する点にあります。保全計画書には、設備を長寿命化させるために「いつ、どの部材を、何個、交換すべきか」という情報が記載されています。実はこれは営業資産であり、宝の山なのです。保全計画書を基に計画マネジメントすることが、最少人数で最大の付加価値を創出するポイントだと考えています。

当社が提供する「LC-Cube」では、部材の耐用年数も含めた製品ライフサイクルの周期管理を行うことができます。これにより「いつ、どの建物の、何の製品・部材を交換すべきか」が一目瞭然となります。メンテナンスを計画化し、点検交換をきっかけとした営業機会、人の採用が行えるようになるのがLC-Cubeの最大の特徴です。クラウドサービスなので、ブラウザにアクセスするだけで誰でも簡単に管理・確認ができます。

藤﨑氏:保全計画を情報資産化にすることで、EOLを迎える顧客が何社あり、どの部品が何個必要かということもわかるので、部材の計画的な調達も可能になります。また経営層にとっても、将来にわたってのメンテナンス売上のポテンシャルも見えるようになります。 「メンテナンス営業の人手が足りない」と言うお悩みがある場合は、当社が代わりにメンテナンス営業を行うBPOサービスも用意しています。

──最後に、今後の展望を教えてください。

加藤氏:まずは、修理データや工事履歴を蓄積していくことで、設備のライフサイクルコスト管理の精度と鮮度をさらに上げることを目指しています。設備の寿命は使う環境や使用頻度によって変わります。例えば海辺、寒冷地といったように、環境ごとで耐用年数をより的確に把握できるようにするため、力を入れて取り組んでいます。

藤﨑氏:将来的に大きな差別化になると考えているのは、サーキュラーエコノミーや脱炭素への対応です。今後は規制が強化され、さらにはGX推進法の取り組みが本格化して二酸化炭素(CO2)排出量やエネルギー消費量も報告が義務化されます。サーキュラーエコノミー対応や環境負荷低減を進めたい企業にとって設備の長寿命化によるCO2排出量削減の可視化は大きな意味を持ってくるはずです。その先に描く姿として、製品の廃棄以降もカバーするライフサイクルアセスメントです。廃棄・リサイクルなどのサービスを提供する企業と協業したサービス開発にも取り組んでいきたいと考えています。 メンテナンス技術は一朝一夕にはできません。ただ、日本にはそもそも他国に真似できない“もったいない文化”があり、それをベースにした“もったいない技術”もあります。今後はその技術を体系化・サービス化し、“日本固有の技術”として海外輸出できるサービスづくりの支援をしたいと考えています。

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