海外イベントへの参加を積極的に取り組むデータセンター事業者のアット東京。同社は6月末に米国アトランタで開催された「ITW 2019」に参加した。今回、イベントで商談を担当したアット東京 営業本部 ICT営業部 主任の門田将氏、そして日本では同 常務取締役 営業本部長の山下卓也氏と同 営業本部 営業企画部 企画担当部長の大西雅之氏に、それぞれインタビューの機会を得たので、その模様をお届けする。

  • ITWにおける各社の商談の様子

    ITWにおける各社の商談の様子

--まず、ITWとはどのようなイベントですか?

門田氏:ITWはInternational Telecoms Weekの略称です。北米を中心とした通信事業者やコンテンツ事業者、インターネットサービスプロバイダーなどが一堂に会する大きなイベントです。弊社は2017年に初めて参加し、今回で3回目となります。ITWにおける活動は、年間で参加する東南アジアや北米などへのイベント参加の一環です。

--ITWに参加する意義について教えてください。

門田氏:狙いとしては海外の企業を、われわれのフラッグシップとなるデータセンター(DC)「中央センター(CC1)」をはじめとした各データセンターに誘致したいからです。特にわれわれのDCの価値が向上するような企業を誘致したいと思っています。

  • アット東京 営業本部 ICT営業部 主任の門田将氏

    アット東京 営業本部 ICT営業部 主任の門田将氏

価値を向上させてくれる企業というのは、たとえばコンテンツ事業者やサービスプロバイダー、コンテンツをエンドユーザーに届けるコンテンツデリバリーネットワーク(CDN)事業者、キャリアなどです。

--これまでのITW参加後の波及効果はどのようなものがありましたか?

門田氏:イベントに参加した翌月にラックが何本売れた、というものではなく、DCの商談自体は長ければ1~2年かかります。そのため、ITWは1つの交渉の場となっています。どうしても海外企業の場合、コミュニケーションが電話やメールとなりがちですが、このイベントで直接顔を合わせて喧々諤々と突っ込んだ内容を話せることは非常にありがたいです。

また、初参加時は現地企業の方々は弊社のことを何も知らなかったため、会社説明に終始していたほか、こちらがミーティング相手の事業内容を知らなかった、ということもありました。そのため、話したとしても結果として、お互いにシナジーが生まれなかったミーティングもありました。しかし、現在ではミーティングの内容は深く、その後の引き合いなども増えてきています。

初参加から2年が経過し、以前と比較して多くの人に認知してもらい、お互いに質の高いミーティングができています。具体的には、実際にお客さまになった企業とは次の段階として、パートナーシップやDC内にあるお客様のPOP(Point of Presence)を活用したコラボレーション案件など、踏み込んだ話ができるようになりました。

顔を見て直接話すということは意味があります。と言うのも競合他社にはグローバルのDCサービスプロバイダーもあり、彼らは世界各地域に営業チームを持っているため、それに対抗する手段として、弊社ではITWなど海外でのイベントを活用することで露出を増やし、集中して営業活動に取り組んでいます。

--今回の参加にあたり、新規顧客や既存顧客への訴求ポイントやアピールポイントはどのようなところでしょうか?

門田氏:ミーティングに取れる時間やイベントの種類にもよりますが、ITWの場合は30分程度であれば、まず接続性を、1時間程で新規のお客さまであれば堅牢性も含めたアット東京のメリットを伝えています。

接続性の定義は打ち合わせをするお客さまで異なり、例えば外資で海外に拠点を持つコンテンツサービスプロバイダーであれば、コンテンツを日本のエンドユーザーに届けるためにローカルのISP(インターネットサービスプロバイダ)やケーブルテレビなどとの接続性について聞かれます。

また、IX(インターネットエクスチェンジ)への接続性、クラウドへの接続性などのニーズもあることから、接続性をメリットとしてお客さまに説明する際は従来のキャリア数だけではなく、ISPやIX、クラウドをはじめとした、それぞれのニーズに対する接続性について話しています。

日本では、わたし以外の営業担当社がイベントや勉強会など参加し、日本企業が誘致を望む海外企業のヒアリングを行い、共有した上でターゲットとなる企業にわたしが営業をかけます。そして、誘致に成功した海外企業を国内の担当者にフィードバックし、日本国内のISPやケーブルテレビなどのお客様を誘致しています。

--今回の参加の感触はいかがですか?

門田氏:好調だと思います。先程もミーティング後に片付けをしているときに、飛び込みで大手キャリアの担当者がCC1に接続拠点を設けたいため、どうすればよいのかと聞かれました。弊社側で呼び込みをしなくても、お客さまから要求されるフェーズにきています。

特に、弊社が相手にしている海外企業は同じ業界の中で転職を繰り返します。前職で弊社の評判が転職先の企業に伝わったり、イベント後の懇親会で知人同士を紹介したりするなど、いろいろな機会があるため、これらのことをきっかけに話が進むということもあります。

--企業から求められていることは、どのようなことでしょうか?

門田氏:CC1に日本を代表すると言われる3大IX(BBIX、JPIX、JPNAP)が進出されたことで、これを武器に海外企業の誘致を強化してきたという経緯がありますが、企業から求められることは業種により、さまざまです。

一例として、クラウド事業者は、単純に設備だけでなく、その後の販売戦略も共同で進めたいという声が多いと感じています。と言うのもアット東京に接続拠点を設けました、となれば弊社のDCに入居する企業に周知しなければなりません。

お互いに協力して、お客さまに効率的にリーチできることはクラウド事業者からすれば高いポイントになります。弊社の観点からすると、クラウド事業者の接続拠点は国内では数カ所のため、そのほかのDCと差別化が図れます。

クラウドのエンドユーザーが同じDCにいれば、クラウド事業者と建屋内の構内配線で接続できることから、配線のコスト低減が可能なことに加え、セキュリティのレベルも高いものになります。また、ネットワークを敷設する上でレイテンシが重要となりますが、同一建屋内のため、その点もアドバンテージがあります。

さらに、英語対応も挙げられます。日本企業においてDCの運用サービスで全て英語対応できるのは他にはあまりないと聞いています。

次ページでは、なぜアット東京が海外イベントへの参加を積極的に展開しているのか、そして今後の展望について山下氏と大西氏に話を聞いた。