台湾TrendForceは、日本政府が打ち出した韓国に対する輸出管理の厳格化の影響で、DRAMのスポット価格が7月の1ヶ月間で平均24%ほど上昇したが、エンドユーザー側のメモリに対する需要はピークシーズンに入ったにも関わらず回復せず、市場で主流のDDR4 8GB製品の大口契約価格は7月の1ヶ月間で28.5ドルから25.5ドルへと10.5%の下落を記録したとの調査結果を発表した。

スポット市場の規模は、DRAMメーカーの過剰在庫を減らすほどには大きくなく、DRAM市場で9割以上のシェアを占める契約市場での価格は下落し続けている。この点に関して「契約価格は、市場にひろまっている最新の出来事に関するニュースではなく、需要と供給のバランスによって決まる」とTrendForceは説明している。

直近の需要予測によると、2019年におけるPCの総出荷台数は前年比4.1%減、スマートフォンの年間総生産台数も同5%ほどの減少となり、サーバのみ年間総出荷台数が横ばいの見込みとなっており、DRAM需要に関しては明るい情報が見受けられない。

供給面では、一部のDRAMメーカーは生産規模を縮小する計画を発表しているが、これらの生産調整の規模はそれほど大きいものではなく、主にレガシープロセスの段階的廃止またはより微細なプロセスの採用に伴うウェハ投入数量の削減である。一方、大口契約を担うモジュールメーカーは今のところ約3〜5ヶ月の在庫を持っていることもあり、需要低迷と供給過剰からの状況改善がなかなか進んでいないこともあり、価格の低下に歯止めがかからない状況となっている。

第3四半期、モバイルDRAMはさらに10%超の値下げへ

こうした状況をふまえて、TrendForceは2019年第3四半期(7~9月)のモバイルDRAMは単体、eMCP(Embedded Multi-Chip Package)/µMCPも含め、10~15%ほどの値下がりになると7月末時点での予測を明らかにしている。これにより、2019年は第1四半期から3四半期まで連続して10~15%の値下げが続けてきたことになる。

DRAMメーカーは2019年中に、従来のLPDDR3の生産を減らして、LPDDR4を全DRAM生産量の75%まで広がるとTrendForceは見ている。また、2020年にはハイエンドスマートフォンが次世代製品であるLPDDR5を採用するとも見ているが、出始めの価格はLPDDR4よりも20~25%ほど高いと見られることから、市場シェアは10%程度に留まるとの見方を示している。

日本の対韓輸出管理強化の影響は?

日本政府は7月1日、軍事的な使用が可能な3種類の半導体材料の韓国向け輸出に関する規制強化を発表した。

TrendForceの調査によると、3つの制限された材料、フォトレジスト、フッ化水素およびフッ化ポリイミドのうち、フッ化水素のみがDRAM/NAND製造に使用されており、フォトレジストはEUVリソグラフィおよびナノインプリント用に限定されており、フッ化ポリイミドはデイスプレイ製造用で半導体製造には使われていないとする。

TrendForceの調べでは、日本はフッ化水素の世界市場で60-70%のシェアを持っているが、韓国の半導体製造業者は他の地域や国から材料を入手するかもしれない。また、SamsungとSK Hynixは約2.5ヶ月分の備蓄品を保有しているので、短期的な影響はそれほど問題にはならないとTrendForceは判断している。

なお、今回の日本政府の措置は禁輸ではなく管理業務の厳格化であり、書類審査に最長90日を要する可能性があるとしていることから、第3四半期中に経済産業省(経産省)が提出された書類をどのように処理するかについて注意深く見守っていくべきであるとTrendForceは指摘している。また、規制強化後の最初の半導体材料が無事に輸出でき、その後の順調に輸出できるのであれば、大きな問題は生じないだろうと同社は見ているほか、8月2日に閣議決定した韓国のホワイト国除外についても同様の見方をしているが、このような経産省の表向きの説明通りの見方が正しいか否かは、7月4日から90日後に経産省の恣意的運用の有無をチェックしたうえでないと判断できないともしている。