Siemensの日本法人であるシーメンスは6月21日、メディア向けに事業説明会を開催。同社の現状ならびに5月7日付けで明らかにしたガスおよび電力事業を分社化し上場させる計画などについての説明を行った。
現在、Siemensはグローバルの事業戦略として「Vision 2020+」を掲げ、デジタル化の推進とインフラの整備を両輪として進めている。そうした流れから、日本法人でも4月1日付けで、組織体制を変更。シーメンスの事業会社(社内カンパニー)として「スマートインフラストラクチャ」、「デジタルインダストリーズ」、「ガス&パワー」を立ち上げたほか、戦略会社として医療機器を扱う「シーメンスヘルスケア」、鉄道を担当する「シーメンスモビリティ」、そして風力発電を担当する「シーメンスGamesa」がそれぞれ独立した形となっている。シーメンスの代表取締役社長兼CEOである藤田研一氏は、「シーメンスというと、昔は補聴器も手がけるなど、基本的にコングロマリットな会社。いろいろなことを複合的にやってきているので、餅は餅屋として、専門性が必要なところは専門的にやっていこう、というのが今回の取り組みの背景にある」と説明する。
そうした体制変更後に発表された、ガス&パワーの分社化。これによって誕生する新会社は、売上高は270億ユーロ(約3.5兆円)、従業員数は8万8000名。シーメンスGamesaのシーメンス保有分の株式(59%)も新会社に譲渡される予定で、火力を中心とした従来型発電プラント事業、送電事業、風力を中心とした再生エネルギー事業と、幅広いエネルギーに関するビジネスをグローバルで展開していくこととなる。
一方、ガス&パワーの分社化により、シーメンス本体には都市インフラを中心に展開する「スマートインフラストラクチャ」とファクトリーオートメーション(FA)やモーションコントロールなどを中心としたIIoT分野の進展を支援する「デジタルインダストリーズ」の2つの事業が残ることとなる。
中でも産業分野のデジタル化に向けたトータルソリューションでの支援については、大きな自信を見せる。中核を担うシーメンスPLMソフトウェアが提供するPLMや3D CADのほか、同社が産業用OSとうたうIoTプラットフォーム「MindSphere(マインドスフィア)」など、IIoTプラットフォームや3D CAD、PLM、シミュレーションなどを個別に提供している企業は多いが、製品の企画・開発から顧客の現場での利用に至る段階まで、一気通貫でそれぞれのプロセスにマッチしたハードウェアとソフトウェアを柔軟に提供できるところはそう多くなく、そうした体制が整っている同社は、そこが大きなアドバンテージになるとしている。
「データをエッジで処理するか、クラウドで処理するかという議論は、IoTを語るうえで必ずついて回る話題であるが、そうした議論に対し、シーメンスでは両方必要である、という回答をしている。クラウドにはクラウドの、エッジにはエッジのメリットがそれぞれある。製造ラインで、リアルタイムに判断してフィードバックやフィードフォワードをかけようと思えば、エッジでデータを処理する必要があるわけだし、世界中の工場からデータを集めて、解析を行い、今まで得られなかった角度からの知見を得るためにはクラウドで処理を行うことが必要となる。だから単にエッジといっても、実態はエッジ+クラウドであり、用途に応じて使い分けようというのが我々の主張である」(同)とのことで、ソリューションの拡充は、こうした考えに基づいて進められているとする。
また、「最近の展示会などでも、未来の話ではなく、すべて現実に実行することができる話が多くなっている。これは、ポジティブに考えれば、デジタル社会が現実的になってきたということ。そうした動きの中で1つ重要になってくるのがサイバーセキュリティをどう構築していくか。ここについては、商売としてではなく、企業側から見て、どういうシステムにすればよいのか、ノウハウの共有を図っていったり、国ごとに違いがあるとグローバル展開で困るので、政府機関などにある程度の共通化を図る必要性を説いていく、といったサイバーセキュリティに関する憲章『Charter of Trust』に基づいた取り組みも進めている。日本でもIBMと共同で展開を進めているが、三菱重工業がアジア初のメンバーとして参画するなど、少しずつだが動きが出始めている」と、産業分野のデジタル化に向けて、必要となるピースを着実に埋めていく活動を進めていることも強調。産業用ソフトウェア界のリーダーとなるべく、今後もさまざまなデジタルの浸透に向けた取り組みを進めていくとしており、パートナーシップの拡大を図っていくとするほか、競合とも健全な競争環境を構築していくことで、これから産業分野でますます重要となっていくデジタルソフトウェアでの存在感を増していくことを目指すとしている。