世界半導体市場統計(World Semiconductor Trade Statistics:WSTS)米国本部およWSTS日本協議会(日本電子情報技術産業協会 半導体部会内)は6月4日、2019年春季の半導体市場予測結果を発表した。それによると、2019年の半導体市場規模は、前年比12.1%減の4120億8600万ドルになるとしている。
半年前に発表された2018年秋季の半導体市場予測では、2019年の半導体市場を前年比2.6%増の4901億4200万ドルとしていたが、2019年に入り、2月20日に前年比3%減へと異例の下方修正を公表。今回の予測ではついに2桁のマイナス成長へとさらなる下方修正を行ったこととなる。
目まぐるしく下方修正が続いているが、これはWSTSに限らず、市場調査会社なども含め、ほとんどの予測がメモリ価格の下落が続いていること、米中貿易戦争の激化に伴う半導体景気の減退などの後退要因を読みきれなかった結果、下方修正を繰り返し発表する状況となっている。
2020年は緩やかに回復
WSTSは、世界の半導体市場動向について「2018年の半導体市場は、ドルベースで前年比13.7%増と、2017年の同21.6%増に続く2桁成長となった。ただし、2018年後半は、米中貿易戦争に端を発して市況が急速に悪化。2019年は、2018年後半の市況悪化の流れを引き継ぎ、月ベースでは前年割れで推移している。予測値作成時点では米中貿易戦争やBrexitなど、不透明要素を完全には払拭できなかったことに加え、2018年からすでに顕在化していたスマートフォン関連需要の頭打ちなどもあり、半導体市場合計で前年比12.1%減と前年割れを予測した」と説明している。
2桁のマイナス成長が予測される中、特に米州市場は米中貿易戦争の影響をもろに受ける形で同23.6%減と大きく減速するとWSTSは予測している。アジア太平洋地域や日本が同9%減程度、欧州も同3.1%減程度と予測されているため、米州の値が際立つ結果となっている。
ただし、2020年の半導体市場規模については「さまざまな懸案事項の解決に向けた何らかの進展を期待すると共に、データセンタ用設備投資の回復や5G導入に伴うさまざまなサービスの拡大、自動車の電動化・機能向上の継続などを考慮し、前年比5.4%増とプラス成長に回帰するものと予測した」としている。
2019年にプラス成長となる製品はあるのか?
2019年の製品別に見た場合の市場としては、ディスクリートのみ、前年比1.4%増の245億ドルとプラス成長が予測されている。そのほかオプトエレクトロニクスとセンサ&アクチュエータといった非ICデバイスはそれぞれ前年比1.5%減の375億ドル、同0.5%減の133億ドルと微減程度と予測されているが、IC全体は同14.3%減の3369億ドルに留まると予測されている。
IC市場をさらに細かく見てみると、メモリが同30.6%減と2年連続の高い成長から、一気に急減する見込みで、そのほかのロジックが同4.0%減、マイクロ(MCU/MPUなど)が同1.1%減、アナログが同5.0%増と比較的穏やかな動きと比べると、乱高下の状況となっている。
2019年の日本市場は前年比10%減の予測
2018年の日本市場は円ベースで前年比7.5%増の約4兆4126億円であったが、2019年は同10.0%減と他地域と同様にマイナス成長が予測されている。
なお、WSTSが述べている「半導体市場」とは、半導体メーカーの国籍や生産工場の場所には関係なく、「半導体製品が半導体メーカーから第三者に販売された地域市場」を意味している。この「第三者」には、半導体ユーザである電子機器メーカー、EMS、半導体を扱う商社などが含まれる。例えば「日本市場における販売額」とは世界の半導体メーカーが日本において第三者に販売した半導体製品の金額を言う。購入者が、購入した半導体製品を外国に運んで電子機器に組み入れたとしても、その半導体製品は日本市場に含まれる。
現在、WSTSに加盟している半導体メーカーは世界中で45社まで減ってしまっており、これ以外のメーカーの販売額は、外部の調査機関などを通して入手、あるいは推測して加味されている。