東芝とジョンズホプキンス大学は共同で、脳内で空間認知を司る海馬の機能の一部を小型な脳型AIハードウェアを用いて模倣・再現させることに成功したことを発表した。

同成果の詳細は札幌市で開催された「IEEE国際学会(回路とシステム)」にて発表された。

脳機能の一部をまねる「ニューロモルフィック(脳型)」技術は世界各地で研究開発が進められているが、今回研究チームは、ネズミの海馬の空間認知機能に関するニューラルネットワークの一部を再現する脳型AIハードウェアを開発し、脳機能とほぼ等価な神経細胞の反応が再現できることを実証したという。

具体的には、ジョンズホプキンス大学が、脳の神経細胞を忠実に再現する神経細胞回路設計技術や神経細胞の制御技術を開発し、東芝の回路実装技術と組み合わせることで、脳型AIハードウェアの構築を実現したという。さらに、ネズミの海馬において、空間認知を司る神経細胞である場所細胞と格子細胞の発火に必要なハードウェアの構成や制御技術、さらには神経細胞の発火信号にポアソン分布をもったノイズを引火する技術を開発。神経細胞ハードウェアと専用の制御回路と組み合わせることで脳型AIハードウェアとして実装することに成功したという。

また、これを用いた実証実験を行った結果、場所細胞の発火による発信現象を再現でき脳神経科学で示された結果とほぼ等しい結果を得ることができることも確認したとする。

なお、同社では研究を進めていくことで、自律移動型ロボットなどの小型化向けた活用が期待できるようになるとしているほか、さらなる小型化に向けた研究により、さまざまな分野で活用可能なAIの高知能化を目指すとしている。

  • ニューロモルフィック

    今回開発された脳型AIハードウェアの構成図 (出所:東芝)