冨士色素は4月24日、電解質にイオン液体類似の深共晶溶媒系の電解液を用いたアルミニウム - 空気電池を実現を開発したほか、これらの電解液に最適な添加剤を複合化させることで、全固体型のアルミニウム空気二次電池を作成することに成功したと発表した。

同社は、金属 - 空気電池として安価なアルミニウムに着目した研究を行ってきた。その理論容量はリチウムイオン電池の150~250Wh/kgと比較すると最大で54倍となる8100Wh/kgと、飛躍的に電池容量を増加させる可能性がある。

今回の研究では、負極にアルミニウム、空気極に炭素系、チタン系などの材料を用いたほか、電解質にイオン液体類似の深共晶溶媒を用いて、かつ最適な添加剤を複合化させることで電解質を固体化することで全固体型のアルミニウム空気二次電池の作成に成功したという。ただし、電極と固体電解質の接触抵抗、電解質のバルク抵抗などに起因する電池の内部抵抗そのものの高さが原因で電池容量は大きくなく、現時点ではイオン液体系の液体の電解液を用いたアルミニウム空気二次電池の電池容量の方が大きいという課題があるという。

そのため、同社ではイオン液体系の液体の電解液を用いたアルミニウム空気二次電池の研究も進めているとのことで、こちらについては現時点で、アルミニウム負極の重量に対してとすれば、通常の室温、大気下において条件を最適化すれば500mAh/g以上の電池容量が確認されるようになってきたとしている。

ただし、同社は電池メーカーではないことから、本格的な電池製造の経験やノウハウが不足しているため、国内外の一部の協力機関と実用化に向けた検討を行っていくほか、今後は他企業、他研究機関との連携、実用化に向けての協業も模索していくとしている。

なお、今回の成果の詳細については2019年8月に米国で開催されるアメリカ化学会の年会にて発表される予定だという。

  • 全固体型アルミニウム空気二次電池

    開発されたコインセルタイプの全固体型アルミニウム-空気二次電池の試作品