理化学研究所(理研)、国立天文台、大阪大学(阪大)などで構成される国際共同研究グループは、「アルマ望遠鏡」を用いて、形成段階にある「大質量星の連星系」を発見したこと、ならびに、その公転運動の解明に成功したことを発表した。

同成果は、理研 開拓研究本部坂井星・惑星形成研究室のイーチェン・チャン基礎科学特別研究員、阪大大学院理学研究科宇宙地球科学専攻の田中圭 特任研究員(常勤)(国立天文台 アルマプロジェクト)、チャルマーズ工科大学 宇宙地球環境学部のジョナサン・タン教授(バージニア大学 天文学部)、NASAエイムズ研究センター SOFIA-URSAのジェイムズ・デビューザー研究主幹、バージニア大学 天文学部 博士課程学生のメンヤオ・リウ氏、INAF アルチェトリ天文台のマリア・ベルトラン研究員、アリゾナ大学 天文学部のケイトリン・クラッター助教(スチュワード天文台)、チリ大学 天文学部のディエゴ・マラドネス教授、同ギド・ガライ教授らによるもの。詳細は英国の科学雑誌「Nature Astronomy」(オンライン版)に掲載された

太陽質量の8倍以上の質量を持つ恒星を大質量星と呼ぶが、そのほとんどが兄弟星を伴う連星系として存在することが、近年の研究からわかってきた。しかし、どうやって連星系が誕生するのかについては、大きく2つのシナリオが提案されてきたものの、どちらが正しいかは良くわかっておらず、大質量連星系の性質の解明が求められていた。

今回、研究グループはアルマ望遠鏡を用いて、その謎の解明に向けた観測を実施。具体的には、地球から約5500光年離れた大質量星形成領域「IRAS07299-1651」から放射される波長1.3mmの電波を観測。その結果、その領域の中心に2つの若い大質量原始星がこれまで見つかっている中でもっとも近接した距離となる約180天文単位(au)で存在することを発見したという。

  • アルマ望遠鏡が捉えた大質量連星系の姿

    アルマ望遠鏡が捉えた大質量連星系の姿 (C) RIKEN,ALMA(ESO/NAOJ/NRAO),Zhang et al.

さらに詳細な解析の結果、いずれの原始星も強力な紫外線を放出する程度まで質量を獲得していること、ならびに主星の質量が少なくとも太陽質量の4~8倍以上であることなども判明したほか、2つの原始星の質量がそれぞれ太陽質量の12倍と10倍程度と見積もられたとする。

そのほかの観測結果も含め、検討を行った結果、研究グループでは、「この連星系は、先に生まれた主星に付随するガス円盤が分裂することで伴星が誕生した可能性が高い」と結論づけたとしているが、連星公転面と主星円盤面にズレが存在するため、単純な円盤分裂シナリオでは、この連星系の誕生を説明することは難しいともしている。

なお、研究グループでは、円盤分裂シナリオでは、公転軌道が円形に近い連星系が誕生すると示唆されているため、将来、観測によってその形状が分かれば、この連星系の起源を決定づけられる可能性があるとコメントしている。