3月17日から21日にかけてSan JoseのMcEnery Convention CenterでNVIDIAの「GTC 2019」が開催され、3月18日にはNVIDIAの創立者兼CEOのJensen Huang氏が登壇して基調講演を行った。予定では2時間であったが、ほぼ3時間の熱演で、盛沢山の基調講演であった。

また、これまでの基調講演は、McEnery Convention Centerの中の大ホールで行われていたのであるが、2018年のGTC 2018では収容人数が不足して別室でビデオ鑑賞という人もでていた。この為、今年は徒歩で15分位のところにあるSan Jose州立大の大ホールを借りることになった。このホールでは6~7割の入りであり、今後、出席者が増えるとしても、しばらくは大丈夫である。

  • Jensen Huang

    GTC 2019で基調講演を行うJensen Huang氏

色々な話が盛沢山であったが、筆者にはデータセンターソリューションを充実させる発表が多かったという印象である。データセンター用GPUサーバとしてはRTXサーバというものが発表された。

  • RTXサーバ

    新発表のRTXサーバ。8Uの筐体に40個のTuring GPUを詰め込んでいる (このレポートのすべての図はJensen Huang氏の基調講演資料のコピーである)

次の写真のPodと呼ぶ単位は、ルーターなどを収容する中央の2ラックを除いた10ラックに30台と中央のラックに計2台のRTXサーバを搭載している。したがって、ポッドに320個のTuring GPUチップが詰め込まれている。

このGPUチップはT4とも考えられるが、今回、T4を使うデータセンター用サーバも発表されており、T4ではなく、新しいTuring GPUではないかと思われる。

次の写真は12ラックのポッドの外観を示すものである。なお、各ラックは物理的には4台のRTXサーバが入れられる筈であるが、この写真では3台しか搭載されていない。DGXサーバでは発熱が大きいためラックへの搭載数を減らしており、このRTXサーバでも発熱が制約になっているのではないかと推測される。

このサーバにはMellanoxのInfiniBandでストレージを接続する。そして、レンダリングや分散された環境のチームメンバーが協力して働くOmniverse、GPUをゲームなどでリモート使用するGFORCE NOWなどに使用することが想定されている。

  • RTXサーバを最大32台収容するPodの外観

    RTXサーバを最大32台収容するPodの外観

そして、基調講演では次の図が示された。中央の図は、スパコンは個々の計算単位は大きいが(1BillionPF)その個数は1000個以下であるのに対して、ハイパースケールの計算は1TFlops程度の計算が1B個あるというような違いがある。さらにデータサイエンスの計算では大きさ個数ともにそれらの中間になるという。

  • T4サーバ

    データサイエンスの計算では、個々の問題の計算量は小さいが、問題の数が多い。このため、DGX-2ではなく、T4サーバの方が適しているという

そして、このような中間的な特性を持つ計算はDGXサーバのV100よりもT4 GPUを4個搭載するサーバをMellanoxのInfiniBandやBroadcomのEthernetでつないだサーバの方が適しているという。この説明は腑に落ちないところもあるが、一応、ここでは、文句はつけないことにする。

このサーバは、NVIDIAはリファレンスプラットフォームを作るだけで、実際の製造、販売はパートナーに任せるという形態をとる。パートナーとしては、CISCO、DellEMC、HPE、富士通、LenovoとSugonの名前が挙がっている。

  • データサイエンスの計算に適したというT4 GPUを4個搭載するサーバ

    データサイエンスの計算に適したというT4 GPUを4個搭載するサーバ。ここに名前の挙がっているパートナーが製造販売する

そして、面白かったのは、自動運転関係のDRIVE AP2X Release 9.0の発表である。このソフトウェアは自動走行車をテストするためのもので、実走行で取得したカメラやRadar、LIDARなどの信号をプレイバックしてそれを自動走行車のセンサー入力に繋いで、実車を使って自動走行車がどのように動くかをシミュレートするものである。

実車を公道で走らせても運転が難しい状況はほとんど出てこず、事故が起こった状況を再現して走らせた方がずっと密度の濃い学習になる。

DRIVE AVは道路や信号、歩行者、他の車などの周囲の状況の理解(Perception)と、地図と対比して自車の位置などを確定(LocalizationとMapping)する。

  • PerceptionとLocalization & Mappingの例

    PerceptionとLocalization & Mappingの例

そして、今回のRelease 9.0では、認識した自車の位置と周囲の状況から、どの方向に動いていくべきかというPath Planningができるようになった。さらに、自車の周囲にSafety Force Fieldという領域を定義し、その中では緊急ブレーキやハンドル操作などでは危険を回避できなくなる事態を発生させないという運転を行うようになっている。

なお、この領域の大きさは、車速や路面の状況などを考慮して決められる。

  • 今回の版ではどう車を走らせるかというPath Planningができるようになった

    今回の版ではどう車を走らせるかというPath Planningができるようになった。Safety Force Fieldを作り、非常ブレーキが間に合わない状況などの危険な状態にならないようにしている

これらの計算を行って、自動運転車を仮想的に走らせるものとしてDrive Constellationというシステムを提案している。Drive ConstellationはDGXサーバを2段積みしたような外観で、このサーバを多数並べてConstellationを作る。これでビット単位で正確に実車を含んだ系で道路での走行をシミュレートできるとのことである。

そして、今回のGTCではトヨタの自動運転車の開発機関であるTOYOTA Research InstituteのAdvanced Development部門が自動運転に関してNVIDIAとパートナーとなることが発表された。

  • TOYOTAのリサーチ・インスチチュート・アドバンス・デベロップメント社がNVIDIAと自動運転の開発のパートナーとなることが発表された

    TOYOTAのリサーチ・インスチチュート・アドバンス・デベロップメント社がNVIDIAと自動運転の開発のパートナーとなることが発表された