誰でも手軽にIoTシステムを構築できることを目的としたオープンソースプロジェクト「Degu(デグー)」が2019年3月15日に発足した。
発足メンバーは、アットマークテクノ、Seeed、コアスタッフ、NXPジャパン、太陽誘電、ノルディック・セミコンダクターの6社。各社が技術を持ち寄ることで、DIY感覚でメッシュネットワーク対応のIoTシステムを設計することを実現したという。
具体的には、核となるのがThreadに対応したノルディックの通信IoT SoC「nRF52840」を太陽誘電がモジュール化した通信モジュールと、各種センサーを駆動させるために必要な機能(セキュアな通信を実現するNXPのA71CH Plug & Trust セキュアエレメントなどを搭載)のボードなどを搭載した「Deguベースユニット」であり、ベースユニットと接続して必要なデータをセンシングするSeeed開発の「Groveスターターキット」、そしてAWS IoT Coreと実際に接続するためのアットマークテクノ開発の「Deguゲートウェイ」の3つのハードウェアとなる。
ベースユニット同士がメッシュネットワークで接続され、そこで収集されたデータがゲートウェイを介してAWSへと送られる、というのがデータの流れだが、ユーザーの実際の作業は、簡単に述べると「Seeedが提供する200種類以上のセンサー(Groveモジュール)の中から、必要な機能を選択」、「ネットワーク設定の実行」、そして「必要とする処理を行うために必要なサンプルコードをダウンロード」という3つのステップを経るだけでIoTシステムの評価を行うことが可能となる。
また、ベースユニットにはセンサーが収集したデータを加工できる能力が備えられており、MicroPythonでユーザーが実行したい、センサーのしきい値設定や平均化などといった前処理を実行し、欲しいデータの形に加工してJSONフォーマットでAWSに転送するといったことが可能となっている。搭載されているOSはリアルタイムOSの「Zephyr」で、Threadを選択した理由としては「Deguプロジェクトは、ネイティブIP通信をベースに開発したかった。インターネットプロトコルの通信網をそのまま使えることで、ネットワーク接続を用意にすることができる。できる限り、簡単にセンサーを活用してもらうためにThreadを選んだ」(アットマークテクノ代表取締役の實吉智裕氏)とする。
オープンソースとして提供されるのは、回路図、部品表、ソースコード、そしてサンプルPythonコードなど、DeguでIoTシステムを構築するために必要なもののほとんどとなる。また、オープンソースということで、コミュニティの活性化も重要となると見ており、「センサーやOSなどを含めた開発者のコミュニティと、実際にIoTシステムを構築して利用してみたいというユーザーのコミュニティの2つをGitHubのDeguプロジェクトサイトを中心に立ち上げていく」としており、スタートアップに参画した6社以外からの参加も推進していくとしている。
なお、Deguの各種ハードウェアの提供は2019年4月10日からを予定しており、コアスタッフをはじめとする複数の代理店にて取り扱われる見込み。DeguベースユニットとGroveスターターキットを組み合わせた「Deguセンサースターターパック」ならびにこのスターターパックにDeguゲートウェイを組み合わせた「Degu IoTトータルパック」といったパッケージ製品としての提供も行われる予定。
また、コアスタッフではDeguの量産設計サービスの受け付けも行っていくとしており、顧客の要望に応じてSeeedが最適な基板の設計などを請け負うサービスを初期費用150万円(金額についてはまだ未確定。100個ロット時の3月15日時点での見通し)から提供していくとしている。
今後のスケジュールとしては、4月10日からスターターキットの提供を開始。その後、活用の促進に向けた情報の拡充を図りつつ、Deguの機能アップデートを随時行っていくとしているのと併せて、量産設計サービスの本格展開や、量産向けDeguセンサーの提供なども行い、将来的には海外での利用にも対応していきたいとしており、発売1年間で、Deguセンサーの利用台数100万台を目指すとしている。