英IHS Markitは、「2018年通年の半導体売上高ランキングトップはSamsung Electronicsであったが、第4四半期に限れば、メモリバブルの崩壊でSamsungの業績が急激に悪化したため、Intelがトップに返り咲いた」との調査結果を発表した。同じく調査会社であるIC Insightsが、2019年通年の半導体売上高ランキングでの首位交代の可能性を指摘したばかりだが、IHS Markitの調査で、すでに2018年の第4四半期にIntelがトップに返り咲いていることが示されたこととなる。

スマートフォンやエンタープライズサーバに使用される半導体の需要低迷により、半導体メーカーの市場シェアが変動している。Samsungは過去5四半期にわたって半導体市場を牽引してきたが、2018年第4四半期には再びIntelの売上高がSamsungを上回った模様だ。第4四半期のSamsungの半導体売上高は前四半期比24.9%減の158億ドルに対し、同四半期のIntelの売上高は同2.3%減の184億ドルと緩やかな減速に踏みとどまった結果、Intelが売上高で首位に返り咲いた模様だ。

IHS MarkitのシニアアナリストであるRon Ellwanger氏は、「Samsungは従来からIntelよりもはるかにメモリチップの売り上げに依存していたため、2018年は携帯電話の売り上げが落ち込んだことに伴って、メモリの売り上げも低下させた。メモリ市場が2018年第4四半期よりも大きな減速となったのは、世界的な金融危機がピークを迎えた2008年第4四半期の時以来であり、それだけのインパクトを有している」と述べている。

IHS Markitの記録によると、Intelは2017年第2四半期まで半導体売上高でトップを維持していたが、成長を続ける携帯電話およびサーバ市場で使用されるメモリチップの価格高騰により、Samsungが売り上げを大きく伸ばし、2017年第3四半期に初めてIntelを抜いてトップに躍り出た。以降、5四半期にわたってトップの座を守ってきたが、メモリバブルの倒壊とともにトップの座を再びIntelに譲ったことになる。

2018年通年の売上高トップはSamsung

2018年のSamsungの年間半導体売上高は前年比20.3%増の746億ドルに達し、トップを維持した模様だ。2位はIntelで、その年間半導体売上高は同13.4%増の699億ドル。2018年第4四半期のSamsungの半導体売上高の87%がメモリチップであったが、Intelのメモリが売り上げに占める比率はわずか6%に過ぎなかったという。

2018年第4四半期は、半導体市場全体で前四半期比10.2%減というマイナス成長の四半期となった。すべてのアプリケーション別売上高、ならびにすべての市場デバイス分類別売上高ともにマイナス成長という結果となっており、Ellwanger氏は 「半導体市場が縮小した理由は多岐にわたる。メモリチップの価格は下落を続けているが、これは主にメモリチップの供給過剰によるところが大きい。各メモリメーカーの生産能力が過剰なり、半導体チップの在庫水準が上昇したためである」と述べている。

  • 2018年第4四半期の半導体企業売上高ランキング・トップ10

    2018年第4四半期の半導体企業売上高ランキング・トップ10 (出所:IHS Markit)

なお、2018年第4四半期の半導体企業売上高ランキング・トップ10は、1位と2位が前四半期に対して逆転したことは先述のとおり。3位以下については、3位のSK Hynix、4位のMicron Technologyともに2桁のマイナス成長となったものの、5位以下との売上高の差が大きいことから、順位の変動はなかった。5位はBroadcom、6位にはQualcommがそれぞれ前四半期から順位を入れ替える形でランクイン。Broadcomは、かつて本社がシンガポール籍であったころにQualcommに買収を仕掛けたが、米国政府の介入により失敗。その後、Broadcomは米国に本社を移しているが、買収の話は今のところ表面には出てきていない。7位は老舗のTexas Instruments(トップ10社の中でもっとも歴史のある企業)で、順位を維持。8位にはトップ10中、唯一売上高を前四半期比5.0%と伸ばすことに成功したSTMicroelectronicsが入ったほか、9位は東芝メモリが前四半期に続きランクイン。そして10位には、前四半期12位であったNXPが同1.7%減とほぼ横ばいを維持し、ランクインしている。STMicroelectronicsとNXPという欧州勢2社がともに順位を2つずつ上昇させて善戦している点は注目すべきところであろう。