NTT コミュニケーションズ(NTT Com)は3月12日、デジタルデータの利活用をインフラ面から支えるデータセンター(DC)サービス「Nexcenter」において、顧客が同社や同社のITパートナーの最新サービス・次世代技術を活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための新たなサービスを開発・検証するPoC(Proof of Concept)環境の提供と、参加企業によるオープンイノベーションを創出するプログラム「Nexcenter Lab」を開始した。

今回の取り組みは、2015年に買収したドイツのDC事業社で子会社のe-shlterが先行してベルリン、フランクフルト、ウィーンで展開していたものを取り入れた。

同プログラムは、東京エリアのDC2拠点において、PoCを行うサーバルームに加え、ミーティングなどを行う専用スペースを24時間365日提供するほか、セミナーやワークショップなどを開催できるプレゼンテーションスペースも併設。

  • サーバルームには冷水が循環するリアドア型空調機を採用。サーバ発熱をラック単位で処理し、最大30KW/ラックの冷却能力を持ち、機械学習などに必要不可欠なGPUサーバの最適環境を実現しているという

    サーバルームには冷水が循環するリアドア型空調機を採用。サーバ発熱をラック単位で処理し、最大30KW/ラックの冷却能力を持ち、機械学習などに必要不可欠なGPUサーバの最適環境を実現しているという

  • ミーティングなどを行う専用スペースのイメージ

    ミーティングなどを行う専用スペースのイメージ

プログラムの目的の1つは、顧客が開発した最新技術・サービスをタイムリーにマーケットに提供することであり、これに向けて同社やパートナーが提供するハイブリッドクラウドやAI、IoTなどの最新サービスに加え、GPUをはじめ高発熱サーバを利用できるIT環境を整備し、開発中の機器とディープラーニング、ブロックチェーンなどの最新技術を組み合わせた検証を可能にするという。

NTT コミュニケーションズ クラウドサービス部長の飯田健一郎氏は「Nexcenter Labのコンセプトとして「多様な顧客・パートナーとともに事業を展開していかなければならない時代を迎え、スピーディに顧客にサービスを利用してもらうためにNexcenter Labで共創に取り組むことを基本としている。1月には国内主要DCのインターコネクトを拡充し、IXやパートナーが提供するITサービスとの相互接続性を向上させており、Nexcenter LabはわれわれのDCでもサービスを利用できることを促進していくための第1歩だ」と、強調する。

  • NTT コミュニケーションズ クラウドサービス部長の飯田健一郎氏

    NTT コミュニケーションズ クラウドサービス部長の飯田健一郎氏

  • 「Nexcenter Lab」のコンセプト

    「Nexcenter Lab」のコンセプト

また、プログラムを通じてドイツ、オーストラリアに加え、マレーシアの拠点で開設しており、連携したPoCが可能となり、各エリアの参加企業との共同開発などを実現するとしている。これにより、新たなITサービスの開発・デファクト化を推進し、DCユーザーへの還元を行い、実地でのリアルな検証効果の測定、海外のLabとの連携、世界市場でのDXを実現につなげていくという。

同社は、DC内のサーバラックや企業向けクラウドサービス「Enterprise Cloud」の無償利用やパブリッククラウド接続など、さまざまなサービスを提供する。さらに、IT業界を中心とした現在のパートナーに加え、さまざまな業種の企業とのパートナーシップにより、プログラムをさらに充実させていく。

  • 用途について一定の審査が必要となるが、DC、ネットワーク、クラウドは無償提供するという

    用途について一定の審査が必要となるが、DC、ネットワーク、クラウドは無償提供するという

ターゲットとする技術領域は、プライベート/パブリック/ハイブリッドクラウド、ストレージ & ビッグデータ、AR & VR、IoT & スマートシティ、サイバーセキュリティ & ネットワーク、DCマネジメント & インフラストラクチャ、分散型台帳 & ブロックチェーン、AI & 機械学習を想定している。

NTT コミュニケーションズ 代表取締役副社長の森林正彰氏は「DXがキーワードであり、自社内外におけるビジネスの変革・創出することを目指している。そのためにはデータの利活用がカギとなり、データの交換は従来の情報交換から価値の交換にシフトしている」と、述べた。

  • NTT コミュニケーションズ 代表取締役副社長の森林正彰氏

    NTT コミュニケーションズ 代表取締役副社長の森林正彰氏

同氏によると、デジタルデータの利活用を実現するためには収集・蓄積・分析に適したデータ流通プラットフォームが必要となるという。そのため、同社はDC運営やネットワーク、クラウドなどのノウハウを用いて、パートナーとともにデータを流通させていくのかを考え、多様な取り組みを進めていく方針だ。

森林氏は「グローバル規模でパートナーと変革を実現し、その中の一例としてNTTグループとDell Technologiesはスマートシティイニシアチブのための共同実証実験を含め、提携している。各業界・分野でDXを行い、新たな価値を創造していくことをパートナーと取り組み、DX Enablerを目指す」と胸を張っていた。

今後、NTT Comでは日本において大阪エリアに、グローバルではタイ、ロンドン、アムステルダム、チューリッヒ、マドリードにそれぞれ拡大していくという。

加えて、顧客のDXを共に実現する「DX Enabler」として、eSIMを活用したグローバルIoTやマルチクラウドを柔軟に連携するネットワークサービスのほか、AIサービス、データマネジメント、サービタイゼーションを支援するサービスをはじめ、さまざまな施策を展開していく。

なお、現状(3月12日時点)のパートナーは日本ヒューレット・パッカード、Dell EMC、レッドハット、インテル、パンドウイット 日本支社、村田製作所、DKSHジャパン(VERTIV日本総代理店)、ABEJA、レノボ・エンタプライズ・ソリューションズ、ラリタン・ジャパン、日本オラクル、日本フォームサービス、日東工業、中央製作所、河村電器産業、マサル工業、能美防災、NEC、日比谷総合設備、NTTファシリティーズ、エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズ、スーパーマイクロ、ヴイエムウェアとなる。

  • 左からレッドハット プロダクトソリューション本部長の岡下浩明氏、日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括執行役員の五十嵐毅氏、森林氏、Dell EMC 執行役員 NTT営業統括本部長の日下幸徳氏、飯田氏

    左からレッドハット プロダクトソリューション本部長の岡下浩明氏、日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括執行役員の五十嵐毅氏、森林氏、Dell EMC 執行役員 NTT営業統括本部長の日下幸徳氏、飯田氏