宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」は2月22日、予定通り第1回目のタッチダウンに挑む。探査機は前日21日の13:15より降下を開始。小惑星リュウグウの表面に到着するのは22日8:06ころで、タッチダウンの成否が分かるのは、同日9:15前後になる見込みだ。
今回、はやぶさ2が狙うのは、リュウグウ北半球の「L08-E1」と呼ばれる領域にある半径3mの円内。この狭い範囲に着陸するため、はやぶさ2は「ピンポイントタッチダウン」という新技術を試すのだが、これについての詳細は以前の記事を参照してもらうとして、本稿では当日の予定についてまとめておこう。
タッチダウン運用は、20日朝より開始。この日はまだ準備段階のため、7~8人という少人数で運用しているとのことだが、本格的な運用が始まる21日からは、人数が大幅に増え、24時間体制で臨むことになる。
今回の運用計画では、21日8:13より降下を開始し、同18:33に高度5kmへ到達。ここで降下速度を落とし、翌22日7:08に高度45mまで接近し、同8:06にタッチダウンする予定。ただ、1つ1つのシーケンスの所要時間は当日の状況によっても変わるため、タッチダウン時刻は±30分程度はズレる可能性があるとのこと。
なお、リュウグウは地球から3億km以上も離れているため、現在、電波が届くのに19分ほど時間がかかる状況。8:06に着陸したとしても、地上でそれを確認できるのは8:25になるというわけだ。着陸前後は通信がローゲインアンテナに切り替わっているため、テレメトリは得られないものの、ドップラーの変化で着陸したタイミングは確認できる。
降下開始前、高度5km、高度500mの各タイミングで、運用のGO/NOGO判断を行う計画(ゲート1~3)。高度500mのゲート3でGO判断を出した後は、地上からの指示が間に合わなくなってくるので、探査機は基本的に自律で行動する。
最新の運用状況であるが、降下開始のGO/NOGO判断に時間がかかったため、降下は当初から5時間遅れの13:15に開始した。ただ降下速度を予定よりも上げることで、タッチダウン時刻は当初の予定から変更はないとのこと。
タッチダウンの状況が分かってくるのは、着陸後、上昇して通信をハイゲインアンテナに戻し、データが届き始める22日8:44以降になる。ここからテレメトリを確認し、成功/失敗の判断には30分程度必要とのことなので、9:15前後が1つの目安になるだろう。ただ前述のように、当日の状況により±30分程度はズレる可能性がある。
はやぶさ2プロジェクトチームのスポークスパーソン久保田孝氏(JAXA宇宙科学研究所 研究総主幹)によれば、この時点で成功と判断する基準は「探査機の状態が正常であること」「シーケンスを完了していること」の2つだという。
正式な発表は、当日11時から予定されている記者会見の場で行われることになるだろうが、運用の様子はJAXA TVでネット中継されているので、順調であれば、管制室で拍手が起きる様子で成功が分かるかもしれない。初号機のタッチダウンでは、当時広報を担当していた的川泰宣氏のVサインが名シーンとなったが、今回は津田雄一プロジェクトマネージャが情報を総合判断して成功を宣言することになる模様だ。
ただ、「シーケンスの完了」が即「サンプル採取の成功」とはならない。これについては、少し補足が必要だろう。
小惑星表面への接地を検出したら、はやぶさ2は弾丸を発射して、飛散した表面物質を機内へ回収する。これらはすべて自律で行われ、その瞬間の状況はリアルタイムでは分からないというのは前述した通りだ。
シーケンスがすべて完了していれば、弾丸発射のコマンドは出ているということだ。しかしコマンドが出たからといって、本当に弾丸が発射されたとは限らない。これは実際、初号機のタッチダウンで起きたことだ(原因は、コマンド中に弾丸発射を禁止する命令が紛れ込んでいたことと推測されている)。
実際に弾丸が発射されたかどうか確認するには、テレメトリデータを詳細に見る必要があり、それは探査機がホームポジションに戻ってからになる見込み。間接的な証明にはなるものの、弾丸の発射には火工品が使われるので、周辺の温度が上がったかどうかなどの結果から、総合的に判断する。運が良ければ、サンプラーホーンを撮影しているカメラ「CAM-H」に、弾丸発射後の地表の様子が写る可能性もあるとか。
ただ、はやぶさ2には、初号機の経験から、サンプラーホーンの先端の内側に、小石を引っかけられる爪が追加されている。万が一、弾丸が発射されなかったとしても、接地さえできていれば、この爪で小石を回収できる可能性がある。はやぶさ2は0.1gのサンプル採取が目標だが、うまく小石が引っかかれば1gオーダーの採取も期待できるだろう。
さらに蛇足ながら捕捉すると、弾丸が発射されたからといって、サンプルがどの程度採取できたかどうかは分からない。サンプル格納容器の内部を確認できるセンサーは搭載されていないからだ。こればかりは、カプセルが地球に帰還して、蓋を開けるまでは分からないので、それまでの楽しみにしておこう。