ヤマハ発動機は2月12日、新川の子会社化ならびに、公開買付けおよびその後の一連の手続を通じた新川によるアピックヤマダの完全子会社化、そして新川の会社分割による新川およびアピックヤマダの共同持株会社体制への移行を伴う三社間の事業統合を行うことをそれぞれ決議し、統合契約書を締結したことを発表した。

3者はともに半導体の後工程装置を手掛けてきたが、2018年後半よりメモリバブルがけん引してきた半導体の好況が鈍化。2019年に入り、半導体メーカー各社が設備投資を抑える動きを見えるなど、半導体産業の環境変化が生じていた。

そのため、新川およびアピックヤマダは、受注の減少による業績の悪化傾向が生じてきており、業務改善に向けた取り組みを進める必要がでてきていたほか、中長期的には、デバイスの多機能化などに対応するための研究開発投資に向けた財務基盤の強化や、各プロセスの工程間をつなぐソリューションの開発などが求められることから、日本の半導体製造装置メーカーとして集結し、互いが有する技術を持ち寄り、高い生産性、安定した品質、低コストをバランスよく実現するトータルソリューションの創造が必要という判断から、3社での事業統合を決断するに至ったという。

ただし、全面的な事業統合との結論には至ったものの、各社の制度などを統合するには時間がかかり、そうした制度の統合がコスト高を引き起こす可能性などもあったほか、新川とアピックヤマダ各社の役職員のモチベーションの維持の必要性や、ヤマハ発動機が産業用機械・ロボット事業だけの企業ではないことなどを踏まえ、全面的な統合ではなく、新川とアピックヤマダを完全子会社化する共同持ち株会社体制を組織、共同持ち株会社の傘下で二社の事業統合を進めることが有用であり、その上で、ヤマハ発動機が新川とアピックヤマダの共同持ち株会社の親会社となることで、共同持ち株会社を通じて三社が強固な資本関係を構築することができ、信用力の強化につながるという判断に至ったとする。

このため、具体的な手順としては、最初に新川によるアピック山田の普通株式に対する公式買い付けを経て、アピックヤマダを新川の完全子会社化を実施。この完全子会社化を行うための資金などの調達先として、ヤマハ発動機を対象とする第三者割当増資を実施(同増資実施後、ヤマハ発動機による新川の株式の保有割合は56.63%を予定)。これにより、新川はヤマハ発動機の子会社となり、この後、新川の事業を新設分割設立会社に継承させる新設分割を行い、現在の新川を共同持ち株会社とする一連の取引を行うことで、完了する見込みだという。

  • ヤマハ発動機

    今回の事業統合の最終的な枠組み。本共同持ち株会社が旧来の新川で、新会社となる新川とアピックヤマダを完全子会社とする形で上場を維持する見通し (出所:ヤマハ発動機Webサイト)

この事業統合により、サーフェスマウンタやFA機器などを提供するヤマハ発動機、チップボンダなどを提供する新川、モールディング装置やテストハンドラなどを提供するアピックヤマダの後工程関連技術の統合が可能となることから、ヤマハ発動機では、半導体後工程および電子部品実装分野におけるターンキープロバイダとして、顧客の期待を超えるトータルソリューションを提供することを目指していくとするほか、日本発の新たなプロセス技術を創造・発信する企業として、新たな参加企業も募り、半導体後工程製造・電子部品組み立て装置市場における世界トップシェアを目指していくとしている。

なお、スケジュールとしては、2019年5月上旬に新川によるアピックヤマダへの公開買い付けの開始を予定しているが、国内外の当局における手続きなどに時間を要するため、具体的な公開買い付けのスケジュールについては、決定次第、速やかに公表する予定としている。