--2018年4月からスタートしたRed Hat Open Innovation Labsの成果はどうですか--

望月氏: Red Hat Open Innovation Labsは、集中的な常駐形式の環境で、ユーザーが、レッドハットのコンサルタントやエンジニア、対象分野の専門家と密接に連携し、企業におけるビジネス課題をともに解決することを目指すものです。4~12週間の常駐期間において、組織横断的な協業によるプロトタイピングプロジェクトを実践するともに、アジャイル開発やDevOps導入の方法論を学ぶことになります。

第1号ユーザーとなった、ふくおかフィナンシャルグループでは、DevOpsによるアジャイル開発手法の習得と実践、システム開発の内製化実現に向けた取り組みを開始し、すでに成果を上げています。Red Hat Open Innovation Labsの取り組みを通じて感じたのは、ビジネス部門とIT部門がワンチームとなって、上流のビジネスプロセスから議論し、IT部門がそれを支援するという仕組みができていないと、デジタルトランスフォーメーションは成功しないという点です。残念ながら、そこまでの仕組みができている企業は、日本では、まだ少ないというのが実態です。

レッドハットは、全世界で数多くの成功事例を蓄積しています。それを多くの方々に知っていただき、ビジネスオーナーやCIO、CTOの意識を変えていくためのお手伝いをしたいと考えています。

もう1つ、2018年を振り返って感じたことがあります。それはオープンソースに対する関心が、さらに高まってきたことです。

--それは、どんなところから感じますか--

望月氏: CxOと呼ばれる経営層の方々とお話をすると、「オープンソース抜きには、デジタルトランスフォーメーションは語れない」という言葉が、異口同音に聞かれます。元々は、オープンソーストはコスト効果に対するニーズが強かったのですが、バグフィックスや新たな機能の提供といった点に代表される「スピード」への関心が高まっています。スピードを持つオープンソースこそが、デジタルトランスフォーメーションにおいて最適であり、これが、スピードを求めるユーザーに対して、オープンソースは価値をもたらすという考え方につながっています。

ITベンダーのこれまでのビジネスモデルは、いかに「ロックイン」するか、というものでした。しかし、ユーザー自身の考え方が変わることで、もはや、そのやり方が通用しなくなってきました。ベンダー側も、オープンソースを取り入れてビジネスモデルを構築する提案ができないと、ユーザーの理解が得られないという時代がやってきています。Googleやマイクロソフト、オラクルといったベンダーが、オープンソースを強く意識しはじめているのは、その表れといっていいのではないでしょうか。

ベンダーも、システムインテグレーターも、オープンソースに精通した技術者の採用に力を注いだり、オープンソースコミュニティに積極的に参加して技術を高めていったりという動きが顕著に見られます。こうした動きは、我々にとって歓迎すべきものといえます。なぜなら、我々にとってさまざまなベンダーやシステムインテグレーターと協業する幅が広がり、スピードアップでき、ユーザーにいち早く価値を提供することができるようになるからです。これはお客様にとっても、いいことだといえます。

レッドハットには、オープンソースをベースにした数多くの優れた製品があります。これらの認知度を高め、ビジネスとして構築して成長させていくことが中長期的な戦略となります。その中で、2018年は、オープンハイブリッドクラウドの価値を、お客様だけでなく、日本の主要なパートナーに対してもきちんと伝えることができ、それに対して賛同をしてもらい、一緒に協業するためのフレームワークができた1年であったと考えています。国内には、700社程度のパートナーがあります。2019年はこれらのパートナーとともに、より深い関係を築いていきたいと考えています。

--最新四半期となる2019年度第3四半期(2018年9月~11月)決算では、67四半期連続での増収を達成しました。レッドハットが継続的な成長を達成している理由はなんでしょうか--

望月氏: 従来のLinuxの活用は、オンプレミスで動かすことが中心であり、そこで高い評価を得てきました。それが、クラウド時代になり、Linuxを活用するといった動きがさらに加速しています。最新四半期でも前年同期比2桁増の成長を達成しており、その結果、Linuxのシェアが拡大しています。

現在、レッドハットが継続的な成長を遂げているのは、お客様のデジタルトランスフォーメーションに寄与することができる企業であることが理解されているからではないでしょうか。欧米での数多くの先進事例が生まれていることに加えて、日本でも、デジタルトランスフォーメーションに踏み出すお客様を支援する事例が増えていることも、それを証明しています。