VAIOは1月16日、短期間・低コストでロボットを開発できる「ロボット汎用プラットフォーム」を発表、同日開幕した「第3回ロボデックス」にてデモを披露した。ロボット開発に必要なハードやソフトだけでなく、運用に必要なクラウドサービスやサーバなどまで、すべての機能を1つのプラットフォームで提供できるという。
同社は、ソニーのPC部門が分離・独立する形で2014年7月に発足。ノートPCや旧AIBOの製造を通して培った高い技術力を有しており、EMS事業を2015年より展開。コミュニケーションロボット分野では、富士ソフト「Palmi」、トヨタ「KIROBO mini」、講談社「ATOM」、バンダイ「ガンシェルジュ ハロ」といった製品を手がけてきた実績がある。
ロボットブームと言われる昨今、多くの企業がロボットに興味を持つ中で、問題となるのはロボット開発・運用の敷居の高さだ。幅広い技術が必要になるため、自社ですべて開発できる企業は限られ、開発期間は長く、コストも高くなりがちだった。
同社はこれまでのロボット開発で得たノウハウをベースに、必要なすべてのものをプラットフォーム化。これにより、「開発期間とコストを限りなく半分に近づける」(同社の吉田秀俊・代表取締役社長)という。開発から運用まですべて任せられるので、技術を持たない企業でも、オリジナルのロボットを作りやすくなる。
ハードウェアとしては、ニーズに応じて、「Simple」と「Middle」の2種類を用意する。
Simpleは対話を主目的としたコミュニケーションロボット向け。CPUボード(Cortex-A7)、無線機能、スピーカ、マイク、バッテリなどがコンパクトなケース内に格納されており、この共通ハードウェアをぬいぐるみなどに埋め込むだけで、簡単にコミュニケーションロボットとして機能させることができる。
一方、サーボモーターでロボットを動かしたり、カメラで顔認識させたりするような、より多機能なロボット向けには、Middleを提供する。CPUはより強力なCortex-A53を採用。Simpleのような専用筐体はなく、ロボットに合わせて、実装する基板などを開発することが可能だ。
このプラットフォームの大きな特徴と言えるのは、外部パートナーの技術を積極的に採用していることだろう。特にコミュニケーションロボットでは、音声認識機能や音声合成機能は非常に重要。「我々は大企業ではないので、得意分野にリソースを集中する」(担当者)として、この部分はすでに実績のある外部の優れた技術を使う。
音声合成は、HOYAの「DNN版音声合成エンジン」を導入した。DNN(ディープニューラルネットワーク)を採用したことで、従来のHMM(隠れマルコフモデル)に比べて表現力が向上。より自然で滑らかな音声を実現できるという。声優の音声をサンプリングし、音響モデルを学習させることで、自由にオリジナルボイスを作成することが可能だ。
ブースでは、「コウペンちゃん」のぬいぐるみをロボット化したデモを披露していた。対話エンジンは製品ごとにカスタマイズすることになるが、このデモ機では、何でも肯定してくれるコウペンちゃんのキャラクターに合わせた反応になっているそうだ。
ロボットの機能は、顧客の要望に応じてカスタマイズが可能だ。たとえば役に立つロボットにしたければ、クラウドに接続して、ニュースを読み上げたり、スケジュールを管理するような機能などを追加できる。またネットが不要なシンプルなロボットのために、スタンドアローンでの動作にも対応する。
機能の例として、しりとりアプリが入っていた
Middleについては、すでに採用したロボットの開発が進んでいるが、Simpleはこの日が初披露。今回はまだ参考出品という形で、提供開始の時期や費用などは未定となっているものの、顧客の反応を見ながら決めていきたいとのことだ。