2019年の年頭にあたり、日立製作所の執行役社長兼CEOを務める東原敏昭氏は、以下の年頭所感(抜粋)を発表した。
あけましておめでとうございます。
2019年は「2018中期経営計画」を必達し、次の「2021中期経営計画」でさらなる飛躍をめざすためにも非常に重要な一年です。新年を迎えるにあたり、この重要な2019年に何をすべきなのか、私の考えをお話しします。
第一に取り組むべきことは、現在進めている「2018中期経営計画」の完遂です。2016年にスタートし、この3年間、さまざまな構造改革を推し進めた結果、2018年度上期決算では、調整後営業利益、親会社株主に帰属する四半期利益などにおいて、過去最高を達成することができました。これらは、従業員一人ひとりの成果の積み重ねであり、心より感謝します。残り約3カ月、決して気を抜くことなく、その必達に向けてまい進してもらいたい。私も自ら先頭に立って、その実現に取り組んでいきます。
その次は、いよいよ新たな「2021中期経営計画」の策定・実行です。この新中計でめざすものは、日立が持つIT、OT、プロダクトの強みを生かし、社会インフラ、ビジネスインフラをデジタルで変革すること。そして、社会イノベーション事業を一層加速することで、グローバル企業から「グローバルリーダー」に変革することです。その実現のためにも、伸びる事業や各地域で成長する事業に注力し、デジタル技術を用いて新たな価値を創出することにリソースを集中させたいと考えています。そして、私たちが注力する分野において、グローバルトップポジションを獲得し、「世界に冠たる日立」をめざしましょう。
先日発表したグローバルNo.1であるABB社のパワーグリッド事業の買収は、まさに、そのための施策の一つです。エネルギーソリューション事業をグローバルに展開・強化すると同時に、グローバル顧客基盤や新たに構築するエネルギープラットフォームを通して、エネルギー分野だけでなく、モビリティやヒューマンライフ、インダストリー、ITなどの多様な分野のお客さまにソリューションを提供できるようになります。ABB社のパワーグリッド事業の買収は、まさにエネルギーソリューション事業が新中計で進むべき方向性を示すものです。その他の事業分野でも、グローバルトップレベルのポジションを獲得し、グローバルリーダーとなるための戦略を策定・実行してまいります。
次に、仕事をするうえで最も基本となる、安全と品質についてもお話しします。日立グループにおいては、製品やシステムに対する品質の信頼が何よりも重要で、企業として、「基本と正道」、「誠」の精神のなかの「損得より善悪」の姿勢・意識を徹底しています。私たちの仕事の優先順位は、「S(Safety:安全)>>Q(Quality:品質)>D(Delivery:納期)>C(Cost:コスト)」であり、安全と品質が最も優先されるべきです。組織文化の改善に向けた体制づくり、教育の徹底などを実施するとともに、デジタルを活用した業務プロセスの構築により、人的関与を排した安全管理・品質保証システムへの移行を加速していきたいと考えています。
現在、世界の政治・経済情勢は、米中を中心とした貿易摩擦の継続や英国のEU離脱の行方、各国の経済成長の鈍化など、不透明感が増しています。一方で、デジタル技術を用いた高度な社会インフラに対するニーズはグローバルで高まっており、日立への期待は大きなものとなっています。
日立は1910年に小平浪平社長が「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という思いで創業しました。この企業理念をもとに、109年の時を経て、社会イノベーション事業に取り組むなかで、いま私たちにとっても「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成がグローバルにおいて最も重要となっています。また、日本でも「Society 5.0」の実現が掲げられており、未来の社会を構築するためのドライバーであるデジタル技術に強みを持つ日立にとって大きなチャンスです。社会課題の解決と日立グループの事業成長を両立し、「Society 5.0」の実現、SDGsへの貢献を継続していきましょう。
このように、日立が社会への貢献にコミットした企業となるためには、まずは「2018中期経営計画」にて確実に結果を出し、日立の実行力をしっかりと示すこと。品質と信頼性の維持、向上などにより、社会からの信頼を勝ち得ること。これらの実行力を備えてこそ、次の「2021中期経営計画」でめざすグローバルリーダーになることができるのです。日立グループが一丸となり、グローバルリーダーをめざしましょう。