技術が世の中に広まるとそれに対応する立法の必要性が出てくる場合がある。欧州でのGDPRや日本での個人情報保護法などもデジタル社会を念頭においたプライバシー保護のためのものだが、プライバシー以外にも、デジタル化により保護されなければならないものは増加しそうだ。Sophos naked securityでは、テクノロジー分野を中心に広く筆を揮うLisa Vaas氏が、米国ニューヨーク市議会で提案された法案について解説している。

法案(The New York City Council公式サイト内Prohibiting certain unsolicited disclosures of intimate images.は、嫌がらせや不快な思いをさせることを目的に、「望まない相手に性的な動画や写真を送る」ことを軽犯罪にするもので、最大で1年の禁固刑、または罰金1000ドル、または両方が科されるものだ。コートを開いて自分の裸を見せて逃げる痴漢行為(フラッシュ)のデジタル版で"サイバーフラッシュ"と呼ばれている。

OSのファイル共有アプリAirDropの場合、写真、動画、ドキュメントを簡単に送ることができる。無線を利用し半径30フィート(約10メートル)の範囲にいる相手(AirDropを利用するiOS端末のユーザーで、すべての人から受信できる状態に設定している場合)に誰にでも送ることができる。テクノロジー分野を中心に広く筆を揮うLisa Vaas氏は、このようなAirDropの設定ミスによる事件は増えており、2017年8月にはHuffington Post UKのライターがロンドンの地下鉄に乗っている時に見知らぬ人から120件ものわいせつな画像を受け取ったことを記事にしていることに言及している。

英国では、わいせつな画像を送ることは2003年成立の「性犯罪法(Sexual Offences Act)」法の66条の下で違法になり最大で禁固刑2年が待っているそうだ。日本では刑法175条や迷惑防止条例に該当する可能性がある行為だ。Lisa Vaas氏は、わいせつなものを見せつける人を罰するのはよいことだが、AirDropは画像を匿名で送受信するのを可能にする技術であり、受け取った人も送信側には匿名で送信した人は半径30フィート内にいるという以外は、誰に送ったのかがわからないことを懸念した上で、このような被害に遭わないためには、以下の2つの対策を勧めている。

・「設定」から「一般」を選択し、「AirDrop」をタップ、そこで受信のルールを設定できる。「すべての人」になっている場合は、「連絡先のみ」または「受信しない」に変更しておこう。

・最新のiPhoneでは、スクリーンのど右上からのスワイプ操作をすることでコントロールセンターが表示される。ネットワークカードにあるどれかのアイコンを長押しすると、「機内モード」「モバイル通信」「WiFi」など6つの設定項目があり、「AirDrop」をクリックすると上記の3つの選択肢から設定できる。

法案を共同作成したDonovan J. Richards氏はNew York Times紙に対して、法案は認知を高め、そのような写真を送りつけても捕まらないという感覚をなくすことにつながると狙いを語っているそうだ。デジタル化による恩恵は様々だが、プライバシーや表現の自由などセンシティブな権利とも関わる分野だけに、モラルやルールを守った利用が求められる。