12月12日から14日にかけて東京ビッグサイトにて開催されているエレクトロニクス製造サプライチェーン総合展示会「SEMICON Japan 2018」において、ディスコは新GUIを採用したSiCなどの難研削材の高精度加工を実現するフルオートマチックグラインダ「DFG8640」のデモなどを行なっている。

  • DFG8640

    DFG8640の実機デモの様子

スマホのような操作感で装置を操作

次世代パワー半導体のSiCや、SAWデバイスの素材であるLiTaO3(LT/タンタル酸リチウム)、LiNbO3(LN/ニオブ酸リチウム)などは研削が難しい一方で、高精度な研削が求められる素材で、DFG8640は、そうしたニーズに対応するべく開発されたグラインダ。また、新たに開発されたGUIにより、スマートフォン(スマホ)のようなスワイプなどといった直感的な操作が可能になったほか、今やっていることを一目で分かるようになり、作業性も向上した。さらに、ウェハ形状の微調整なども、数値入力だけで、0.00μm単位で実現することができるなど、使い勝手といった面での改善がなされた。ちなみに、現在のバージョンではできていないが、今後は、ユーザーが良く使う機能だけを1つの画面にまとめる機能なども追加することで、使い勝手のさらなる向上を図って行きたいともしている。

  • GUI

    DFG8640のGUI。スマホの画面のようにスワイプやタップなどで操作を行なうことができる

  • ハンディ端末

    メンテナンス用のハンディ端末。こちらも同じGUIが表示される。デモ時は接続されていないため、画面は黒いままであったのはご了承願いたい

  • ウェハサンプル

    DFG8640で研削されたウェハのサンプル

配管いらずで導入可能なダイシングソー

また、同社ブースでは、参考出展ながら純水の送水管などの配管設備や排水・排気設備不要で、稼動できるダイシングソーのデモ展示も行なっている。

これは、ダイシングソー内部に純水製造/リサイクルユニット(ろ過や水温調整機能含む)を搭載することで、市水とエアと電気さえあれば、工場そのものに純水製造設備がなくても、導入を可能とすることを目指したもの。

  • 排気/排水設備不要なダイシングソーのデモ
  • 排気/排水設備不要なダイシングソーのデモ
  • 排気/排水設備不要なダイシングソーのデモ
  • 排気/排水設備不要なダイシングソーのデモの様子。配管がないのに、ウェットなプロセスが稼動しているという妙な感覚に陥る

配管に左右されないため、工場レイアウトの自由度が向上するほか、災害時の早期稼動といった副次的な効果も期待できるという

また、同じく参考出展として、スマホやPCなどのブラウザで、複数の装置の状況を監視・制御することを可能とするシステムのデモも行なわれている。

こちらは、同一ネットワーク上に配置されている複数台の装置をWi-Fiなどを介してスマホなどを繋げることで、遠隔モニタリングを可能とするもので、その特徴としては、タイムライン・トーク形式のGUIとすることで、端末から装置にメッセージを送ると、その変身が各装置から返ってくるほか、装置からも自主的になんらかのアクションが発生した際に、メッセージが送られてくるというものとなっている。新たなサーバの立ちあげなども不要とのことで、参考出展とはしているものの、技術的に基本的な部分は完成済みとのことで、自社で使ってみたい、という声がかかれば、提供そのものには対応が可能だとしていた。

  • 遠隔監視デモ
  • 遠隔監視デモ
  • 遠隔監視デモ
  • スマホなどで複数の装置の状況を一括して監視できるシステムのデモの様子。まずはディスコのダイシングソーから、とのことであるが、筆者的にはオープンスタンダードは規格として他社の装置も併せて監視できるようになれば、非常に有意義なソリューションになるのでは、と感じた

3日で並列加工搬送システムを立ち上げ

このほか、同社ブースの中で、もっともスペースをとり、かつ注目を集めていたのが、「並列加工搬送システム」のデモであろう。

こちらは、前回のSEMICON Japan 2017にて行なっていたデモの進化系で、ウェハを1枚ごと1台の搬送カセットに搭載して搬送することで、複数のダイシングソーが、自己の仕事量を見計らいながら、並列で加工を行うことで、スループットの向上を図ろうというもの。前回は、コンベアベルトに流れるウェハを各装置ごとに自己の仕事量を判断してピックアップするか否かを行うものであったが、今回は、エレベータユニット、AGVなどと組み合わせて、自動搬送ソリューションとしての1つの完成形としてのデモとなっている。

  • 「並列加工搬送システム」のデモ
  • 「並列加工搬送システム」のデモ
  • 「並列加工搬送システム」のデモ
  • 「並列加工搬送システム」のデモ
  • エレベータユニットやダイシングソー、レーザーソーといった各種装置の上に搬送路とAGVを配置。各工程の作業度合いを見ながら、ウェハ1枚ごとに空いている装置に分散処理させることで、1カセット単位のスループット向上を図ることを可能にしようというもの。今回のデモの様子は、ほぼそのまま工場のレベルという出来のものであった

デモで稼動しているAGVや処理しているソフトウェアなどもすべて社内の工場の自動化推進を図るチームが内製したものとのことで、3日間の設営期間で立ち上げることができたという。同社では、後工程での省人化を推進していきたいとしており、単なる装置だけではなく、ソリューションとしての提案も行なっていくことで、そうした実現を目指していきたいとしている。

さらに、「並列加工搬送システム」と並んで注目を集めていたのが、前回もデモ展示されていた「KABRA(Key Amorphous-Black Repetitive Absorption)」プロセスを完全フルオートメーションを実現する「KABRA!zen(ゼン)」の進化系である。

こちらは、前回は4台の装置をつなげ、SiCインゴットの研削までのデモであったが、今回は7台の装置をつなげ、さらにウェハとしてはがした後の研削、研磨までフルに行なうことを可能としたもの。また、装置そのものの性能も向上しており、インゴットから切り離す際の素材ロスが従来の約100μmから約80μmへ、それにともない1時間あたりのウェハ取れ数も4枚から6枚へと増加。さらに、ウェハとしてはがす前にレーザーマーキングを行なうことで、取り違えなどを起こすことがないトレーサビリティを実現するなど、ウェハの質によって歩留まりが大きくかわるSiCにとって必要な機能が追加されたものとなっている。

  • KABRA!zenのデモ

    KABRA!zenのデモの様子。インゴットを投入すると、一切人の手を介さずウェハとなって出てくる。ウェハメーカーにとってはクリーン化や省人化にもつながるある意味夢のソリューションといえる