立命館大学発ベンチャーの人機一体は7月24日、新社屋「秘密基地人機一体」の竣工式を開催、内部を初公開した。これまでは大学内で開発を進めてきたが、今後、高さ4mクラスの人型重機を作るには手狭だったため、6月1日、滋賀県草津市内に移転したもの。同社はここで、2020年までに人型重機を実現させることを目指している。
未来の重機はこうなる? ロボットが丸太をカット!
同社によれば、この秘密基地は「金岡博士の"人型重機が存在する未来の記憶"を呼び起こすための"船"として秘密裡に開発された、巨大ロボット型建造物」だという。この設定だけで十分マッドな雰囲気が漂うが、竣工式もなかなかマッド。来賓によるテープカットが普通に行われたと思いきや、次に出てきたのはロボットによる"丸太カット"である。
丸太カットで使われたのは、同社が開発した双腕ロボット「MMSEBattroid」の最新モデル「ver.1.1」。基本的に、今年3月のSlush Tokyoで公開されたver.1.0から大きな変更は無いが、今回の丸太カット用に、右手にチェーンソーを取り付けた特別仕様になっていた。
MMSEBattroidは、マスタースレーブ方式の遠隔操縦ロボットである。バイラテラル(双方向)制御のため、ロボット側のアームが物体に当たったときは、操縦側のコントローラはそれ以上動かなくなる。まるで自分がロボットになったかのような臨場感で、操縦できるというのがMMSEBattroidの大きな特徴だ。
同社社長の金岡博士が目指すのは、人間に代わって危険で過酷な仕事をしてくれる人型重機の開発である。MMSEBattroidはいわば、人型重機の上半身のプロトタイプという位置付け。下半身のプロトタイプとなる2足歩行の「パワーペダル」も開発を進めており、これらの技術を組み合わせれば、人型重機が実現できるというわけだ。
「4mクラスの人型重機を2020年に完成させるための技術はもう持っている」と金岡博士は自信を見せる。「このマスタースレーブシステムの用途は人型に限らず、産業のさまざまな分野に活用できる。人型重機をフラグシップとし、あらゆる産業の中に人が操作できる機械を普及させるのが、我々のビジネス上の目標」だという。
近年、人工知能(AI)技術が急速に発展し、ロボットも自律型に注目が集まっているが、汎用的な作業を自律ロボットでこなすには、まだいくつものハードルがある。将来的には完全自律に置き換わる可能性はあるものの、人間とロボットの"いいとこ取り"とも言えるマスタースレーブには、現実的な解としてすぐに使えるというアドバンテージがある。
秘密にできない秘密基地、ここから情報を発信!
しかし、4mクラスの巨大ロボットを作るとなると、課題となるのが資金調達だ。同社はすでに、リアルテックファンド、エイベックス・ベンチャーズからの出資を受けているが、今後のために、さらに賛同者を募り、コミュニティを形成していく必要がある。
金岡博士はこれまで、「技術を高めることが先」と考え、情報発信を抑えてきたとのことだが、「秘密基地ができたことで新しいフェーズに入った。これからは積極的に外に出て行く」と述べる。
今後は、YouTubeを始め、さまざまなメディアを活用し、同社がやろうとしていることを広く伝えていく。この秘密基地も、そういったメディアの1つだ。「だからいろんなものを仕込んだ。来た人に楽しんでもらえるようにしたい」と、狙いを説明する。
ちなみにこの秘密基地なのだが、なんと賃貸物件だという。地元企業が支援の一環として、土地を提供し、自由に社屋を作らせてくれたのだとか。この、やたらと目立つ、賃貸の秘密基地から、どんな人型重機が誕生するのか。今後に注目だ。