九州大学(九大)は、「動的離散選択分析」と「動的ストック・フロー分析」を組み合わせた解析手法を開発し、自動車車検制度による経済寿命の変化がCO2排出量に与える影響について推計することに成功したと発表した。

同成果は、九州大学経済学府の中本裕哉氏と経済学研究院の加河茂美 教授らの研究グループによるもの。詳細は国際学術誌「Journal of Environmental Management」に掲載された。

  • 車検制度がプリウスの買い替え選択に与える影響のグラフ

    車検制度がプリウスの買い替え選択に与える影響のグラフ (出所:九州大学Webサイト)

地球温暖化の脅威が目に見えてきている今、例外なく既存の政策・制度を見直し、あらゆるCO2排出削減政策を講じていく必要がある。自動車においては、エコカーの購入にばかり目がいきがちであるが、エコカーを長く乗るという行動、そしてエコカーを長く保有させるための制度設計が重要である。

今回の研究では、エコカーの代表であるトヨタのプリウスに焦点をあて、プリウス所有者が買い替えを選択する確率を動的離散選択分析をもとに推計した。一般的な車の平均寿命は約13年といわれているが、プリウスの経済寿命を求めたところ5.07年と短いことが分かった。

また、この経済寿命が短い主な要因は車検制度であり、これを見直すことでプリウスの経済寿命の延長を図ることができるだけでなく、CO2排出量も減少することを明らかにした。

これは、車両の安全性の確保などを目的とした自動車車検制度が、結果的にエコカーの経済寿命を短くさせ、その寿命短縮がCO2排出量の増大をもたらし、結果的にそのCO2排出量の増大に起因する気候変動が人々の生命と財産を脅かしているということを示唆している。

今回の成果を受けて研究グループは、今後、車両の安全性の確保とCO2排出量の抑制の両方を達成するための新たな自動車車検制度の提案が求められるとしている。