北海道大学(北大)は、市販の簡素なロジウム触媒と有機触媒を組み合わせる技術を開発したと発表した。

同成果は、北海道大学大学院薬学研究院の松永茂樹 教授、吉野達彦 助教、名古屋大学大学院工学研究科の石原一彰 教授、波多野学 准教授らの研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Nature Catalysis」オンライン速報版に掲載された。

  • 簡素なロジウム触媒と有機触媒のハイブリッド化の図

    簡素なロジウム触媒と有機触媒のハイブリッド化の図 (出所:北海道大学Webサイト)

互いに鏡に写した関係にある鏡像異性体は、化学的な性質は似ているが、医薬品として利用する場合、両者の効き目がまったく異なることが知られている。一方の鏡像異性体が優れた効果を示し、他方が重篤な副作用を起こすリスクもあるため、有用な鏡像異性体だけを選択的に化学合成する必要がある。そのため、医薬品の製造プロセスでは鏡像異性体のうち片方だけを選択的に合成する化学変換が求められている。

また、廃棄物の少ない効率的な医薬品の合成には、合成用触媒を利用して原料の狙った位置の炭素-水素結合だけを活性化することが重要だ。従来、この2つの要件を同時に満たすためには、鏡像異性体を区別するユニットを強固に化学結合させる必要があり、多工程にわたる複雑な前処理を施したロジウム触媒が利用されていた。そのため、大量に触媒を入手できないという問題があるほか、廃棄物の削減の観点からも改善の余地を残していた。

今回の研究では、市販されている簡素な構造のロジウム触媒と、容易に入手可能な有機触媒を、イオン性相互作用を利用して1工程で組み合わせ、高性能のロジウム触媒を簡便に調製するハイブリット化技術を開発した。

このハイブリッド触媒を利用することで、抗ウイルス活性が期待される核酸塩基誘導体の化学変換において、狙った位置の炭素-水素結合だけを活性化し、鏡像異性体のうち片方を選択的に得ることに成功したという。

なお、今回の成果を受けて研究グループは、今回開発したハイブリッド触媒技術は、組み合わせる有機触媒を自在に変えることが可能で、汎用性の高い手法だとしている。また、近年注目を集めている核酸医薬品の核となる構造の生産において、環境負荷の低減や費用の削減への貢献が期待されるとしている。